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姉と雅貴くんの結婚式の招待まですれば、雅貴くんの結婚相手は姉でなくてはならない。親が決めた許嫁とはいえ、姉と雅貴くんは気が合うようで何よりだと思う。もう私はここに居なくてもいいだろう。家を出るには、まず部屋探しからだと以前から考えていたんだよね…
そこへ翔貴がゴボウって…どうぞ。
彼はアメリカの大学生活を終えてからも、日本とアメリカを行き来する形で自分の仕事を形あるものにした。その完成形が日本を拠点にするということらしい。1歳しか年齢は違わないのに、翔貴は私の何倍もの人生を生きたような経験をしていることは彼の話を聞いていると想像がつく。翔貴は決して苦労したとも、努力したとも、すごいだろうとも言わないけれど尊敬出来る友人だ。
その彼が那智に声を掛けた。那智は大学卒業後、野田屋に就職している。
「うん、僕は一度ここを離れようと考えてる」
隣の那智がそっとお箸を置きながらはっきりと言った直後
「どういうことだ?」「何処に行くっていうの?」
両親が慌てて身を乗り出した。そりゃ…初めて聞くのだから驚くけれど、どちらも否定的な語尾の強さで那智を攻撃するような音色というのはどうだろう?
「お父さんもお母さんも…もう反対って言っているように聞こえるよ?那智がこれだけはっきりと言うにはきっとちゃんと理由や考えがあるんだと思うから、否定的でなく最後まで聞こ…」
「茶子、のんびりと尤もらしいことを言うのね。那智から話を聞いてるの?」
「ほんと、笙子の言う通りだわ。茶子は野田屋の将来がどうなってもいいって言うの?」
きた…姉と母が私に攻撃的なことには慣れた。これくらい私は大丈夫…那智の意思は守るよ、お姉ちゃんだもの。
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