6982人が本棚に入れています
本棚に追加
「野田屋を継ぐと、これまでに那智は言っていないはずです。野田屋という大きな看板を那智に背負わすのはどうかと思う。那智が自分から背負うならいいけれど…京都の本家も合わせて野田屋なんだから、その将来がどうなってもいいとか、ここでそんな話になる方がおかしいと思う」
「チャコ、今日やっと喋ったと思えばめちゃくちゃカッコいいね」
「俺もそう思う。俺は茶子の言うことに丸々賛成。で、那智、続けて」
野田屋のことを言ったから、姉と母だけでなく父までもが私に厳しい目を向けるがかまわない。私が家を出たあとで那智が我慢したりすることのないようにはっきりとさせなきゃ。那智がここを離れるって言うなら、それは見届けてから私は家を出た方がいいかな。盾にはなれなくても、このくらいのクッションにはなってあげられるから。
「まず…野田屋は僕が居ても居なくても変わらないと思う。経営は京都に一本化する方向性で関東で縮小を始めた。潰れることはないけれど父さんたちがいて、京都の人たちがいてそれで十分だ」
那智は野田屋の内側から、ちゃんと先を見極めたんだね。
「それで、何処に行くの?相談もなしにって…大丈夫なの?」
もう大人だもの、大丈夫だよ。いつまでも那智を小さい子どもだと思っているのは母だけだ。
「富士山の見えるところ」
「いい場所へ行くんだな、那智」
翔貴が肯定的な言葉を掛けてくれたことで私がホッとする。
最初のコメントを投稿しよう!