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「コトカ、やっぱり凄く絵が上手いね~」
日曜日の昼下がり。
今日は、コトカが小学生以来、はじめて私の部屋に遊びに来てくれたんだ。
「そうかな……」
「うん! もっと自信持った方がいいよ――あっ! どうしよう! ベタ塗りしてたとこ、ちょっとはみ出しちゃった……」
「あぁ、平気平気。ホワイト使えばいいから」
言って、コトカは白い液体を筆につけ、慣れた手つきで直してくれる。
ふふふっ。と、思わず声に出して微笑んでしまった。
「……なに、によによしてんのよ」
「いやぁ、なんか、凄く嬉しいなぁって。こうやって、真剣なコトカを見れるのも、直接夢のお手伝いが出来るのも。私にだけ打ち明けてくれたんだから、しっかりと役に立たないとね! なんかわくわくしてしきちゃったっ!」
すると、コトカは、今まで見たことのないほど柔らかく頬をゆるめた。
「本当に……螢川の言う通りだったわ」
「んん? なんでそこで螢川くん?」
あっ、マズイ! と、口を手で押さえるコトカ。なんだかワザとらしい気がするのは、気のせいかな?
「いやぁ、ね? ほらぁ、最近、螢川と話す機会があったじゃない?」
「あぁ。この前の、小豆洗いの件で?」
「そうそう。それで、なんかイイなーって思ったの」
「……えっ!? イイなっ!?」
「うん。あれから、パタッと変な音も聞こえなくなって、皆もすっごい感謝してたし。螢川くんさすがぁ~っ! って」
……そういえば、他の子たちも、優しくてカッコイイ! って言ってたな。螢川くん、喋らなくても人気あるくらいだし……。
でも、コトカは興味ない、って思ってた。
イイ感じ、ってなに……?
もしかして――
「螢川くんのこと、好きなの?」
なぜか、ニヤリと口角を上げるコトカ。
「どうしてそう思うの?」
「えっ? いや、だって……イイなぁって思ったんでしょ?」
「うん。イイなぁ、って。それだけだけど」
それ、だけ?
途端に、肩が軽くなっていった。
「なぁーんだ。びっくりしたぁー」
安心して胸をなで下ろす。
……ん? んんん? 安心って……どうして?
螢川くんのことが好きだ、って思っても、全然不思議じゃないよ。
だって、私も。
私も――
「ぷっくくくく」
「なっ、なによお!」
「顔、赤くなり過ぎだって。本当にユリは分かりやすいなぁ」
「なっ……」
別に、と言いかけたところで、やめた。
もう、これは隠せないよ。
螢川くんの、優しい笑みが、声色が……ずっと頭から離れないの。
気づけば、彼のことを考えて、彼の隣にいたいと願ってる。
そして――
「私、螢川くんのこと、好きなんだ……」
彼の一番、特別な存在になりたいって、馬鹿みたいに夢見てる。
「これは、朗報だぞ。憑き物探偵よ……」
「へっ?」
「いや、なんでもない」
そうだ! とコトカは急に手をポンと叩く。
「好きなんだったら、デートに誘ってみるのはどう?」
「で、ででデートぉ!? わ、わたくしごときと、あの螢川くんがっ!?」
「…………うん。なんか、あんたたちお似合いだと思うわ」
「へえっ?」
肩を震わせるコトカに、私は小首をかしげるしかなかった。
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