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「はぁ……」
ここのところ、大きなため息を吐くのが多くなった気がする。
コトカと螢川くんが、二人っきりで話していた。そのことを、家に帰ってもずっと思い返していた。なにを話していたんだろう? いつの間に、あんなに仲良く喋るようになっていたんだろう?
私の知らないところで、私の知らない螢川くんが、どんどんと増えていく。
……いや、私は、もともと螢川くんのことなんて、なにも知らないんだ。だって、憑き物探偵だって知ったのも、つい最近だし。そんなの、考えてみれば当たり前のことなのに。
どうして、こんなにも胸が締め付けられるのかな?
螢川くんの助手になって、特別な存在に近づけたら、それで良かったのに。
いつの間にか、螢川くんの特別になりたい、だなんて欲が出てきて。
私だけが知っていたいだなんて……。
こんなことを思う自分がいるんだってこと、初めて知った。
「あぁ、どうして――。神様」
私は、螢川くんの、特別じゃないんですか?
その日の夜。
アオーーーン。と、美しく深い鳴き声が、静かな街中に響き渡っていた。
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