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「螢川くんっ! ビッグニュースだよ!」
次の日。
合葉さんは、いつも通り、意気揚々と話しかけてきてくれた。
よかった。やっぱり、昨日の違和感は気のせいだったのか、と安心する。
「なにがあったの?」
聞くと、ふっふっふっ、と合葉さんは意味深に笑う。
「私のお姉ちゃんがね、尻尾を掴んだのです!」
「尻尾?」
「そう! 狼少女の!」
一層キラキラと目を輝かせ、身を乗り出してくる合葉さん。
「狼、少女? 少年ではなく?」
「違うよ! それはただのホラ吹き少年のことでしょ?」
ぐふっ。
そ、それは僕のことデスカネ……。
予期せぬところからみぞおちを殴られた気分だった。
「じゃなくって、本物なの! 耳と尻尾が生えてて、アオーン! って鳴きながら家の屋根から屋根へ飛び移っていったんだって!」
「…………。お姉ちゃんの、夢の話ではなく?」
「もう、違うってば。お姉ちゃんの使ってるSNSにも、夜に同じようなのを見た、って声で溢れてたんだよ?」
溢れてる、といっても。聞いたところ四、五人程度だった。でも、確かに偶然周りの友達も不思議な現象を見たとなれば、それはもうテンションくらい上がるだろう。
「超ー限定的に、さらに突発的に、エイプリルフールごっこが流行り出したとかではなく?」
「なにそれ! その可能性の方が低いでしょ!」
確かに。
うーん、と僕は頭を悩ませる。実際に僕は見ていないから、どうも信じられない。
「螢川くん。これは、もう一度野外調査する必要アリ! だねっ」
両拳を胸の前でにぎり、意気込む合葉さん。
「……でも、その狼少女の目撃情報って、全部夜の話でしょ?」
小学生が、夜の街をふらつくもんじゃないだろう。お母さんに怒られるの、コワイし。
「そうだけど……」合葉さんは肩を落として俯き、あっ! とまた明るい笑顔でこちらを見つめた。「逢魔が時に調査すればいいんだよ! その、放課後、とか……」
ほ、放課後!? 合葉さんと、放課後デート!?
「そ、それなら……まぁ、」
「やった! 決まりだね!」
そして――早速、今日の放課後に、二人でまた公園に集まることになった。
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