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「……だる。勝手に取りなよ」
「ありがとう、大切にお借りします。⋯⋯なんだか樽井くんって気だるげさ加減が異次元だから、すぐオジサンになっちゃいそうだね」
「夏野さ、よく一言余計って言われない?」
僕の安眠を妨害したのに加えて失礼なことを言う人だ、まったく。なんて、ため息を吐くと、遠慮なく僕の鞄の中に手を突っ込んでいた夏野が
「そんなことないよ」
と声を上げて笑った。そんなこと、大ありだよ。顔を見ずとも楽しそうなことがわかる軽快な笑い声に、早く五限が始まればいいのに。と今度はさっきよりも深いため息を吐いた。
無自覚に人を疲れさせる夏野から逃げるように、もう一度机に突っ伏し直せば。目の前が暗くなって安心した僕の頭頂部を、冷房から出るあまり冷たくない風がやさしく撫でていく。タイミングよく昼休みが終わるチャイムが聞こえてきて、めんどうくさい夏野の気配が遠ざかっていくのを感じた。
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