31S

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小説 私は誰⁉️(31) 次の日私と妹は、教えられた住所に従い、所轄孝明君のマンションを訪れた。 所轄孝明君は、快く私達を迎えてくれた。 僕は、自己紹介し、妹の事を告げた。 所轄君は感じの良い青年である。 歳は私より少し上だろうか? 所轄君の部屋は1LDKで一人で暮らしているとの事。 見ると犬が居る。どこかで見た事がある。 何故か犬は僕のところに来た。僕に懐いているように。 このマンションでは、犬を飼ってもいいのだろうか? 「僕が犬を飼っていた。」と両親が言っていた事を 思い出した。そして、 「その犬が何処に行ったか、分からない」とも言っていた。   「昨日小山内教授から、連絡がありました。 私と小山内教授とは、以前からの知り合いです。 私のお爺さんの研究した事を、小山内さんは更に深めてくれてます。 それが、完成したと言っておられました。 水原さんも小山内教授と一緒に研究していたと、小山内さんから聞いています。 水原さんが記憶を無くしたと聞いたのですが、、、」 「私は有る事で衝撃を受け、記憶喪失になってしまったのです。」 僕はあえて、交通事故とは言わなかった。最初にその言葉を発すると所轄君が交通事故と思い込むといけないからだ。 所轄君は有る事に対しての追求は無かった。 僕を気遣っての事であろうか? 「それはお気の毒に、、、、。 全ての記憶を無くしたのですか?」 と、興味深そうに聞いてきた。 僕は、彼を信じて全てを話そう。 今まで殆どの人を疑って話をしてきたが、所轄君は小山内教授が紹介してくれた人物である。 小山内教授を信じる以上は所轄を信じるのは当然だと思った。 「実は、僕が救急車で運ばれ、気が付いたのは病院でした。 その時、自分の名前も、年齢も分かりませんでした。 全く記憶が無いのです。何故その様な事になったのかも分からない。私の身体の傷を見て、警察は交通事故と言い、医師は暴行を受けた可能性が強いと言う。僕にはどちらか分からない。 僕が小山内教授とどの様な研究をしていたかも、分からない。」 妹が居るので、妹や両親を疑っている事を言うのはやめよう。 本当の妹なら傷くし、スパイなら警戒させてしまう。 所轄君は言った。 「それはお気の毒に、、、、。私も物忘れはよくしますが、、、。 でも記憶は残ってます。 それよりも、余分な記憶さえあります。」 余分な記憶?僕は不思議に思った。 所轄君に僕が研究していた事を聞いてみた。 「小山内教授は私の爺さんが以前開発した、他人の記憶を伝達するマシンの開発を研究しているのです。おそらく、水原さんも小山内教授と一緒に研究していたのだと思います。」 「他人の記憶の伝達? それはどの様なものですか?」 「私も詳しくは知りませんが、子供の頃、私の祖父から、 祖父の記憶を私に伝達されたのです。 ただ、伝達されたのは確かだったのですが、余り重要な記憶では無かった。 そのマシンの設計図を僕が持っていたので、小山内教授に見てもらったのです。小山内教授は凄い研究だと褒めてくれたのですが、 このマシンは副作用が大き過ぎると言って、改良したのが 夢を自在に見ることが出来るマシンでした。 それを更に改良して、今回出来上がったものは、他人の記憶の伝達マシンだと言う事だと思います。」 所轄君の話は信じていいだろう、イヤ信じよう。 信じがたい話だが! 所轄君は、小山内教授の事と所轄君が経験した事を、僕に話してくれた。(詳しくは小説パート2及び小説パート4真実編にあります) 所轄君の話を聞き終わった後、今後僕はどうするかを話しあった。 「出来るだけ早く小山内教授の元へ行き、失った記憶を復元する事最も優先する事だと思います。 水原君の記憶のサンプルはマシンに保存されていると小山内教授が言っていました。」と水原君は僕に言った。 「僕もそう思っているのだが、先立つお金が無いしパスポートも無い。」 情け無い事を、所轄君に告げた。 「それは、心配しなくても良いです。お金はある女性から私の方に振り込んでもらいます。 パスポートは事務所の小山内教授の机の引き出しに保管されているとのことでした。 貴方が持っていかない限りは、有るはずだと言ってます。」 夢みたいな話で有る。嬉しさのあまり言葉出なかった。 犬が僕をジーと見ている。 可愛い。  「この犬の名前は何というのですか?」 と聞いてみた。 「カルメンと言うですが、元の名前は知らないのです」 「元の名前?」 「実はこの犬、拾ったのです。迷子になっていて。 警察に届けたら、飼い主が分かるまで預かって欲しいといわれたのです。 カルメンは、知らない人を見ると吠えるのに水原君には、 吠えませんね?不思議です。」 「いつ頃、拾ったのですか?」 「確か、6月の半ば過ぎだったと思います。詳しくは警察に記録されていると思います。」 もしかすると、僕が飼っていた犬かも知れない。時期的に合う。 でもここで言うのはやめよう。 今、犬を飼えるほど精神的な余裕は無い。 「そういえば、カルメンの首輪の裏側に、こんな物があったのです」 それは、紙に何かが書いてあるのだが、インクが滲んで読め無いものだった。 「おそらく、飼い主の住所だと思ってますが、読めないのでどうしようも無いです」 僕は、所轄君がどうしようも無いものを持っている方が不思議だった。 その日、所轄君に案内され小山内教授の事務所に出かけた。
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