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「ユウくんには騙されたよ! 本当に裏切られた!」
僕の部屋にやって来たリノがすごい剣幕で食ってかかって来たとき、何のことだかさっぱりわからなかった。
リノとは付き合って二年になるが、今までこんなに怒っているところを見たことがない。笑うと幼く見える愛嬌のある顔を今は涙でぐしゃぐしゃにしていた。
「ユウくんは誠実で優しい人だと思ってた! それなのに……二股掛けてたなんてね!」
「えっ二股!? 何の話? 僕、そんなことしてないよ!」
「嘘つき! 私、見たんだから! ユウくんが女の人とホテルのラウンジで会っているところ!」
リノは勝ち誇ったようにそう言ってスマホの画面を見せた。そこには確かに僕が女性とコーヒーを飲んでいる姿が写っている。
「あーこれか……」
「そう! これ! 言い逃れできないよ! 私、別れるから!」
「ちょっと待って。これは二股じゃない」
「ただホテルのラウンジでコーヒー飲んでただけって言うつもり? 信じると思う? 別れるよ、私。ユウくんには本当にガッカリだよ」
そうリノは目に涙をためて、強がるように口元に笑みを浮かべた。しかし、僕は落ち着いた声で応じる。
「ただコーヒー飲んでただけだよ。だって妹だもん」
「えっ! 妹!?」
リノが驚いてスマホの画面を見つめる。
「この前、東京に遊びに来たから、空港に迎えに行ってホテルまで送ったんだ。前に妹の写真見せたでしょ。髪切ったから気づかなかったかな? っていうかいたなら、声かけてくれれば良かったのに」
リノは青ざめた顔をして俯いた。そうして、キッと僕を見つめる。
「……違う。妹なんかじゃない。絶対に違う。ユウくんは私を騙そうとしてるんでしょ!」
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