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「明日の舞踏会でも会えると言うのに、何故前日にわざわざ今日来た? フィロサフィール公爵」
「それが、娘のアンジェリカの件で、殿下にお話ししたいことが……」
「もうすでに、目覚めたと報告は受けているが?」
ルイは、このタイミングになって公爵が自分に会いに来る理由を察していたので、どうにか早く追い返せないだろうかと焦っていた。
「体調が悪いのであれば、ダンスはしなくてもいい。ずっと休憩部屋に居させても構わない。陛下による婚約の宣言の時さえ俺の側にいてくれるのであれば」
「体調は、大丈夫かと……」
「かと?」
ルイは、公爵がアンジェリカのことを、まるで赤の他人のように話していることに違和感を覚えていた。
そしてその理由こそが、このタイミングで城に来た最大の理由なのだろうとも、ルイは分かっていた。
公爵からのその申し出は、何度も、嫌と言うほど言われたのだから。
「あ、いえ……娘は今、教皇様が迎えに来まして」
「教皇が?」
(何か、あったのか……?)
普段、王侯貴族とルナ教は距離を取るようにしている。
ルイはそこまで詳細な理由は知らなかったが、かつて王侯貴族派と教皇派で、ソレイユ国を揺るがす大きな対立があったことだけは、ルイも学びの中で知っていた。
「何故、アンジェリカを教皇が迎えに?」
「闇払いの儀式をするためだと……教皇様はおっしゃってました」
「闇払い……ではやはり、アンジェリカは呪いにかかっていたということなのか?」
「…………できる限りのことをするとだけ……」
公爵は、はっきりと言葉にしない形でルイの質問に答えた。
「そうか…………」
「殿下……こんな時に再度お伝えするのもどうかと思ってますが」
来た、と思った。
どうせそれが理由なのだろうと、ルイは分かっていた。
だからこそ、ルイはできる限りこの会話を早く切り上げたくて仕方がなかった。
だが、公爵はそんなルイの顔色1つ読むことができないほど、愚鈍だった。
「今はそなたの提案を聞いている場合ではないが」
「いいえ、やはり明日を迎える前にお伝えせねばと」
「帰れ、アンジェリカのことをどうにかするのがお前の仕事だろう」
「いいえ、殿下とこの国のために提案することこそが、私の仕事です」
ルイが、公爵を帰らせようと手を上げ、使用人を呼んだちょうどその時、ルイが1番聞きたくない公爵の願いが言葉となった。
「どうかアンジェリカではなく、アリエルを正妃にすることを、再度ご検討ください!」
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