三つ子の魂百までも(1)

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三つ子の魂百までも(1)

1、 暖かい日差しが、私の目に降り注いでくる。 まぶたに残る明るさが心地よい春の日である。 僕の名前は杉田公一。 勉強が得意でも無い僕が、有名な大学に合格できたのは、スポーツが得意だったからである。 此の大学は勉学だけでは無く、スポーツにも力を入れている。 そのおかげ僕は合格出来た。 僕は柔道を小学生の頃からやっている。 高校生の時、全国大会で個人の部で ベスト4に入ったのが評価されたみたいだった。 勉強は苦手だけど、柔道なら自信はある。 大学の入学式の時、僕に似た人を発見。 世の中には自分とよく似た人間は三人いる、と聞いた事があるが、 観れば観るほど僕に似ている。 その男も不思議そうに僕の顔を観ている。 だが、私よりかなり小さい。顔色も良くない。 他人の空似であろう。 気にする事もないとその当時は、思っていた。 その後、その人と一度も会う事は無かった。 学部もおそらく違っていたのであろう。 校内も広く、学生も大勢いる。巡り会わない学生の方が断然多い。 また、僕は授業を受けると言うより柔道の練習に時間を費やす方が多かった。 それに校内よりも柔道場にいる方がくつろげた。 自分と似た男の事は気にしてはいたが、だからと言って 自らすすんで調べる事は無かった。 時は瞬く間に過ぎて行き、5年経った。 柔道は強くはなったが、全国で通用する程は伸びず、この体力を活かすのは、警備会社の警備員と思い、就職したのだが、一年で辞めてしまった。上司と上手くいかなかったせいもあるが、 自分には不向きと感じた。 今は無職のプー太郎。親の脛をかじっている。 何か仕事を探さないと、バイトばかりじゃ将来不安だ。 その様な事を考えながら、いつもの街の通りを歩いていたら、 今まで気づかなかったが、電信柱に張り紙がしてあった。 見ると求人のはり紙である。 此の様な場所に貼ってあるのは、大概いかがわし物が多い。 でも、張り紙に書いてある事に興味を持った。 「貴方も探偵になりませんか?先着一名様募集」 と書いてある。 後は住所と電話番号。 代表は女性なのか名前が、飯島直美と書いてある。 なんか面白そうな感じがして、しかも此の場所から近いので 行ってみる気になった。 何故なら一人しか雇ってくれないみたいだから、急がないとまずい。 携帯のナビを見ながら、着いた所が古い雑居ビル。 しかも5階にその探偵事務所はあった。 エレベーターも無く5階までは階段で行くしかない。 階段を登るのは別に苦では無いが、 もしかして、ヤバい仕事をさせられるかも知れない。 と言う、不安に襲われたが、探偵と言う仕事にも興味があった。 ここまで来たのだから、事務所に行って話しだけでも聞いてみよう。嫌なら辞めれば良い、と考えを楽にした。 ドアの横にインターホンがある。ドキドキしながら、押して見た。しばらくして聞こえてきた声は女性の声だった。 少し安堵。 「どちら様でしょうか?ご用件は何でしょうか?」 と二つ質問された。 「あの、私、杉田と言います。求人の張り紙を見てきたのですが、  よろしいですか?」 と、インターホンに向かって言った。 自動ロックなのであろうか、鍵の開く音がした。 「どうぞ、お入り下さい。」と言われた。 私は、ドアのノブを回した。入って行くと最初に目に入ったのが、 窓ガラスであった。結構見晴らしが良い。街並みがはっきりと見える。 部屋の広さは僕が想像していた通りの大きさであった。 20畳ぐらいであろうか。 ソファーがテーブルを挟んで2台置いてあり、机が二つ向かい合わせて並んでいる。 おそらく此処にいる人は、2〜4人ぐらい、もしかすると2人かも知れない。警備員を一年していたので、その様な勘は働く。 女性に案内され、僕は入口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて ソファーに座った。 女性は歳の頃はアラ30という感じで、何か色っぽく、芸能人に例えるならば、壇蜜みたいな人である。 僕は直感で、もしかしたらヤバい所に来てしまったのかと、 少し後悔した。 女性は私に挨拶をして、名刺を差し出してきた。 名刺には、「リサーチ イイジマ 代表 飯島直美」と 書いてあった。 代表と言うぐらいだから、役員はいるのだろう。 女性は「張り紙を見て来ていただいたのでですね。ありがとうございます。履歴書はございますか?」 と聞いてきた。 「御免なさい。さっき見たばかりなので、何も持たずにきました。 履歴書が必要ならば、此処で書きますが。」 と、言ったら、飯島さんは少し面食らったのか、 「では、此処で言って下さい。メモを取ります」 と答えてくれた。 僕は、自分の人生を振り返る様に、代表に伝えた。
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