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4 妹さんは僕の隣に腰を降ろした。 かすかに、甘い香水の匂いがした。 顔は女優の剛力彩芽に似た清楚な感じの人である。   妹さんが、 「此の人、今度入った、、、。えーと、名前は何んだっけ?」 と僕に聞いてきた。 「知っているよ、さっき聞いた。杉田公一君だよ。」 と、男が逆に僕を妹さんに紹介した。 その言い方は何故か、少し不機嫌そうだった。 「そうそう、杉田公一さん。御免なさい! 私、もの覚え良く無いの!」 と、笑いながら、ごまかす様に言いつつ、 「此の人は私の叔父さんで、元刑事の伊東吾郎さん。 今は探偵。と言うか私達の先生です」 と明るい声で言った。 (なるほど、それで伊東四郎に似ていたのか!名前も一字違いだし。) 「私は飯島裕美と言います。直子の妹です。 姉と幾つ違うかは言わないわよ。」 と、いたって明るい。 もしかすると、此の人は面白い人かも知れないと思えてきた。 気が合いそうな感じだ。 女の人は愛想の良い人が良い。笑顔に屈託が無く、一緒に居て警戒しない人の方が、安心出来る。 「杉田君、せっかく入ってくれたのだけど、お客さんそれ程来てくれないの。だから暇を持て余してるのよ。おかしいでしょ!。」 と裕美さん笑いながら言っている。 「お客さんが居ないって、どう言う事ですか? ぜんぜん居ないのですか?」 「ぜんぜん居ない事は無いけど、滅多に来ないのよ。何故なのかしら?どうしたら良い?」 と、僕に聞いてきた。 「そうですか、お客は少ないのですか? もっと宣伝したらどうでしょうか? 電信柱に広告を貼って見るとかして、人目に留まる様にするとか?」   「電信柱に無断で貼っては駄目だ。広告会社に貼って貰わないと」 と伊東吾郎さんが少し怒った言い方をした。 何か不機嫌みたいだ。 「腹減ったな!何か食べるものは無いのか?裕美コンビニで何か買って来てくれ」 と1000円札を裕美さんに差し出した。 (お腹空いていて、不機嫌だったのか) 不機嫌の理由が判明した。 「カップラーメンなら、ここにあるわよ。」 と言って1000円貰わずにカップラーメンを取りに言った。 此の事務所には炊事の出来る場所があり、ガスコンロと冷蔵庫 が置いてある。 茶碗や、湯呑み、コップ類もある。 ここで寝泊まりぐらいはできる。 「味噌ラーメンと醤油ラーメン、どっちが良い?」 「朝からカップラーメンか!仕方無い、味噌でたのむ」 と不服そうであったが、伊東吾郎は美味しいそうに食べていた。 「お姉ちゃんね、いつも来るのは12時以降なの。 ここの売り上げが無いから、キャバ嬢してるの。 お姉ちゃん。ちょっと壇蜜に似てるでしょ。だから人気あるんだって。自慢して言っていたわ。でもね。」 と言いながら、僕の耳元で囁くように 「お姉ちゃんね。恋人居ないよ」と告げた この話は、昨日聞いた。 妹は何故か、僕にもう一度教えてくれた。
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