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「代表はここの売り上げ少ないから、キャバ嬢しているのですか?
それは大変ですね、それほどまでして、探偵の仕事をしたいのですか?」
と不思議そうに僕が質問すると、
「そこが、直美の変わったところだ。『一度これがしたい』とい言ったら、人の言う事は聞かない。強情な所は、おまえの親父に似てるな」
と言って、裕美の顔を見た。
「お父さんも頑固だったよね。
でも、それがお姉ちゃんの良いところでもあるのよ。
いつも夢見て生きているもん。もう良い年だし、結婚したらと思うのだけど、夢見てるのよね。」
と羨望とも嘲笑とも取れる言い方であった。
「でも僕は、キャバ嬢までしても、一度決めた探偵の仕事をやり切りたいと言うお姉さんの気持ちを尊重したいです。」
と強い言葉で言い切った。
「お姉ちゃんと結婚する?そしたら、私が妹になって付いてくるよ。グリコのおまけみたいに」
と、いたって明るいが、少し僕を馬鹿にしているようにも感じる。
(おまけは要らない)と言ってやろうかと思ったが、ここは大人の対応。
「おまけだけで、良いです。」と心にない事を言ってしまった。
すると、裕美さん「いやだーー」
と言って僕の肩を笑いながら叩いた。
もしかすると、純情な人かも知れない。
その様なたわいない話しをしながら、いつの間にか時は過ぎていった。
その間はお客は誰も来なかった。電話も掛かってこない。
12時過ぎに代表の飯島直美が事務所に入って来た。
少し眠たそうな顔であるが、美人に間違いない。
此の人に恋人が居ないと言っても、信じる事は出来ない。
飯島直美さんは、僕を見て微笑んで言ってくれた。
「来てくれたのね。今日から探偵ね。一緒に頑張ろうね」
と握手してくれた。
僕はこの人の為なら、頑張れると思った。
「此の人、私に叔父さんです。怖い顔してるけど、元刑事です。
ヤクザでは無いので安心してくださいね。
私達の先生で教えてもらっているの。」
「今、妹さんからお聞きしたのですが、お客が居ないのですか?」
「居ない事ないけど、少ないの。どうしたら良いかな?
どう思う、良い意見聞かせて。」
「それよりも、代表はどの様に思っているのですか?」
「それが分からないの?宣伝もしてるけど、依頼者が少ないの。」
「そうですか、依頼者少ないですか?
じゃ、もっと宣伝しましょ。
具体的な内容を書いたり、判り易い例を書いたりして、
女性向きの探偵事務所と言うイメージを作っていくとかして。
気軽に相談出来るように案内文を作って宣伝するのです。
おそらく、探偵と言うと敷居が高いと思われていますよ。」
僕の意見が採用され、三人で案内のチラシを作った。
チラシと言っても費用をかけることは出来ないので、
パソコンで簡単に作った。
とはいえ、見た目は豪華でプロ並みの仕上がりだ。これを街で手渡しするのだ。多くの人の注目を浴びる事が最大の宣伝となる。
私達がチラシを作っている間に、伊東吾郎は帰って行った。
三人仲良く、一つのものにむかって行くのは、探偵の仕事には必要である。
僕の探偵一日目は、チラシ作りで終わった。
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