勇者と私と占いと

1/4
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

勇者と私と占いと

ここはエルナード国の城下町のとある一角。 天幕が張られたその奥で、老婆が水晶玉の前で何やら唸っていた。 それを固唾をのんで見守るのは、一人の青年である。 見事な金髪を肩まで伸ばし、目が覚めるような海色の瞳は期待にキラキラと輝かせている。 10人中10人が『美形!』と叫ぶほど、顔立ちが整っている青年だ。 そこらの男たちがさぞかし呪いたくなるほど悔しがるだろう。 そんなイケメン(死語?)が見守る中、老婆の眠ってんの?ねぇ大丈夫?起きてる?そのまま永眠しそうで怖いよと閉じられた目が、カッと開いた。 「キェーーーキェッ、キュン!!!!」 奇声と共に。 普通ならヒくが、青年はむしろ身を乗り出して、 「おお!」 と歓声を上げている。 先程のテンションはなくなり、静かになる老婆。 無駄に溜めてる。さっさと言え、と普通ならイラッとするが青年はゴクリと唾を飲み込んだ。 「…そなたのラッキーアイテムは、この先の小さなパン屋に入ると最初に目に入ったもの、じゃ」 それを聞くと、青年は飛び出していく。 「彼等に女神の加護があらんことを…」 老婆の呟きは、誰にも聞かれず空へと消えた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!