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勇者と私と占いと
ここはエルナード国の城下町のとある一角。
天幕が張られたその奥で、老婆が水晶玉の前で何やら唸っていた。
それを固唾をのんで見守るのは、一人の青年である。
見事な金髪を肩まで伸ばし、目が覚めるような海色の瞳は期待にキラキラと輝かせている。
10人中10人が『美形!』と叫ぶほど、顔立ちが整っている青年だ。
そこらの男たちがさぞかし呪いたくなるほど悔しがるだろう。
そんなイケメン(死語?)が見守る中、老婆の眠ってんの?ねぇ大丈夫?起きてる?そのまま永眠しそうで怖いよと閉じられた目が、カッと開いた。
「キェーーーキェッ、キュン!!!!」
奇声と共に。
普通ならヒくが、青年はむしろ身を乗り出して、
「おお!」
と歓声を上げている。
先程のテンションはなくなり、静かになる老婆。
無駄に溜めてる。さっさと言え、と普通ならイラッとするが青年はゴクリと唾を飲み込んだ。
「…そなたのラッキーアイテムは、この先の小さなパン屋に入ると最初に目に入ったもの、じゃ」
それを聞くと、青年は飛び出していく。
「彼等に女神の加護があらんことを…」
老婆の呟きは、誰にも聞かれず空へと消えた。
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