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優しい光に包まれて
息を切らして漣が美術館の中に入って来た。
受付の人に栞の居場所を確認すると、館内を駆けていく。
彼の目指す場所……。四方をステンドグラスで囲まれた空間。
様々な色のステンドグラスが、天窓から差し込む光を浴びてより美しく光輝いている場所。
その光景はあの時、二人が見た時のまま……
ステンドグラスから放たれる、
優しく柔らかい光。
天井を見上げ、太陽の光を全身に受けながら、
その空間の中央に栞が立っていた。
漣は栞に駆け寄ると、おもいっきり
抱きしめた。
「漣君? 何? どうしたの?」驚く栞。
「助けに来た」
「誰を?」
「栞さんを」
「何で?」
「だって、栞さんの心の中が苦しいって言って助けを求めてるって聞いたから。その……」
と漣が照れくさそうに言った。
「だから、助けに来てくれたの?
あの時みたいに」
「うん。助けに来た。そして……」
「そして?」
「栞さんを迎えに来た」と言うと漣は彼女を
さらに強く抱きしめた。
「漣君、助けてくれて、ありがとう。
迎えに来てくれてありがとう」
と栞が言った。
二人は見つめ合うと、にっこりと優しく
微笑んだ……。
ステンドグラスから放たれる、美しい光、温かい光が二人を優しく包み込んでいた。
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