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「先輩、ひょっとして警察よりカウンセラーの方が向いているんじゃないですか?」
少女を児童相談所の役員に受け渡した後、事務作業をこなしているジュンナに沙羅が軽口を言った。
「どういう意味よ」
不服そうにジュンナが問う。
「いや、さっきの事情聴取、すごかったなぁ、と思って。いや、先輩の高圧的にならず話を聞き出す能力はもちろんですけど、それ以上に…、なんというか、…先輩、演技とかじゃなく、本気で泣いていたでしょう?……共感能力が高いというか、感受性強すぎます。」
冗談交じりの口調だったが、ジュンナは一瞬言葉を失った。
“──本気で泣いていた”
返す言葉が浮かばない。
「……、だめね。ああいう境遇の子を見ると、つい妹と重ねちゃって。」
そこでようやく、沙羅は自分の失言に気づいたようだった。
冗談めかして言うべきではなかったと、次の言葉に迷っている。
「……私じゃきっと、あんなふうに心を開いてもらえなかったですよ。」
沙羅の精一杯の気遣いに、ジュンナは表情を和らげる。
「いいのよ、気にしないで」と返した。
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