第3話

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「俺だって……」  絞りだしたような、苦し気な声。 「俺だって、そんなの、信じられなかったけどさ……、お前の顔見た瞬間、分かっちゃったんだよ。そこから色々考えてたら、そういえば、miccoはタイツ履いてることが多いとか、ライブ発信やらないし声も出さないとか、首元晒さないとかさ、今までなんとなく引っかかってたコトが、全部つながってくじゃん……」  うほ、マジか。  そんな風に怪しまれてたんだ、俺。  まぁ、たまにアンチがそんなようなことをコメントしていたのは知っていたけど。 「もう、疑う余地がないんだよ、micco」  わぁお、そっちで呼んできたよ。俺認めてないのに。  というか、リアルで呼ばれるなんてめったにないから、違和感しかない。  はぁ、またしても作戦失敗。  つか、そこまでmiccoのこと、見てたってことだよな、こいつ……。  え、でも、リンスタやってないって言ってなかった?  まぁ、どちらにせよもう確信している中条に、俺は言葉が出ない。  キュ――  上履きの擦れる音がした。中条が、こちらに一歩距離を詰める。  背の高い中条を見るために、上を向いた俺の両頬をやつは両手で包み込んだ。 「な、中条?」  慌てる俺だったけど、中条の顔を見た途端、その手を払いのけることなんてできなかった。  あまりにも、悲し気だったから。 「こんな可愛い顔に傷つけて、ホントごめん」  中条の手が、俺の前髪をそっと横に避ける。腫れ物に触るかの如し丁寧な手つきとその眼差しは、まるで……。 「あ、いや……、だ、大丈夫だから……」  とにかく、手を離してくれぇー!  こんなとこ、ほかの誰かに見られたらどうするんだよ。 「にしても……、ホントかわいい、micco……いや、片瀬か。まさか、miccoが男で、そいつがクラスにいたなんてさ……、マジでヤバいよな……」  ヤバいって、なにが?  クラスのやつに暴露したらヤバいよなってこと?  俺は怖くて聞けない。  あたふたしてると、中条はようやく手を離してくれた。  包まれてた頬が外気にさらされてほんのりと冷えていく。  あー、もーどうしよー……。  心臓が、ドクドクと血液を過剰に送り出していく。鞄を握る手に、ジワリと汗がにじんだ。  この胸のざわつきが、一体どこからきているものなのか、もはやわからなかった。  もう、この手しかない。
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