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第4話
「尊が撮影以外で女装したいなんて、どういう風の吹き回しかと思えば……、そんなことがあったのねぇ……」
かくかくしかじか。
次の日、俺は昨日の学校での出来事を姉ちゃんに話した。これは、俺だけの問題ではなく、姉ちゃんにも関わってくることだから。
『俺の彼女になって、片瀬』
俺=miccoというのがバレたあの日、お礼をするという俺に、そう言った中条。
訳が分からず戸惑う俺に、『とりあえず、明日miccoとデートしたい』と言ってきたのだった。
なんでもやる、と言った手前断われなかった俺は、その提案を渋々了承し、今日に至る。
その『デート』に挑むべく、姉ちゃんにコーデとメイクを手伝ってもらっているという訳だ。
一通り黙って聞いていた姉は、なるほど、と頷く。しかしその間も手は止まらない。手際よくメイクを施していく。俺も一通りは自分でできるが、やはり姉ちゃんのほうが格段に上だ。
「ごめん、姉ちゃん。でも、中条はきっと黙っててくれると思う」
「バカねぇ、もう。ばらされたって良かったのに……。いい、尊」
姉ちゃんは、アイライナーを持った手のまま両肩をがしっと掴むと、正面から見つめてきた。
「う、うん……?」
俺は、服にアイライナーが付きやしないか内心冷や冷やだ。
「もしその中条ってやつに嫌なこと言われたりされたり襲われたりしたら、バラされることなんか気にしないで一目散に逃げていいからね!」
「お、おそ……⁉ えっ? あ、う、うん、大丈夫だよ、中条はそんな奴じゃないから」
いや、その前に俺男だし!
「さ、これで良し! 鏡見てみて」
くるりと横を向けば、姿見にmiccoが映っていた。
*
待ち合わせの場所は、この辺りで一番大きな駅前の広場。
目の前にはロータリーがあり、車や人の行き来で賑やかだった。
俺は、スキニーのジーンズにちょっとフリルのついたブラウス、オーバーサイズのカーディガンを羽織り、レースアップブーツを合わせた。
顔があまり目立たないよう、ストレートロングのかつらにして、黒のキャップを深めに被った。
普段、リンスタにあげるのは、割とごてごてのゴスロリやThe女子といった可愛らしいコーデばかりだが、どうしても人目を引いてしまう。
ボーイッシュに仕上げてくれた姉ちゃんに感謝だ。
それにしても、落ち着かない。
それもそのはず、miccoになってから女装姿で外に出かけたことがないのだから。
それに相手はクラスメイトかつ男。
デートって……、なにすりゃいいんだ?
まぁ、男同士で遊ぶだけだと思えば……、って、俺男友達と遊びに行ったことあったっけ?
記憶を辿るがこの高校生活中には少なからず無かった。せいぜい、太一と放課後にファストフード店で食ってだべるくらいだな……。
考えるだけ無駄だ。
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