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「みっくん、おっはよー!」
登校していると、ひよりが後ろからアタックをかましてきた。不意打ちによろけた体をどうにか持ちこたえた俺は「おはよう」と返す。
ひよりの告白を断ったのがつい先週のこと。
申し訳ない気持ちでいっぱいの俺を気遣うように、ひよりは今までと変わらず接してくれていた。だから、ひよりが望むなら、と俺もこれまで通り接する事に努めている。
左腕に自分の腕を絡ませて体を密着させたひよりに、「離せよ」と言うも華麗にスルーされてしまうのがここ最近のお決まりだ。
だから、周りに居る同じ制服を着た生徒たちから冷ややかな視線が注がれるのを、俺は俯いて絶えるしかない。
「おい、離せよ。尊が困ってるだろ」
くっついたひよりとは反対側、俺の右側から顔を出したのは中条。
「イケメン先輩は黙ってて! いーっだ!」
美少女さんと美男子さん。
お二人の間に挟まれた俺の気持ち、考えたことある……?
ここ連日繰り返されるこの光景にがっくしと肩を落として、俺は項垂れた。
「つーか、お前は振られたんだろ、いつまでも未練がましく尊にくっついてんじゃねぇよ」
人の失恋の傷を抉るとか、ちょっとひどくないか。
ちょっと言い過ぎだろそれは、と思ったものの、傷をつけてしまった張本人である俺が言えることは何もなかった。
しかしひよりは、ダメージを受けている様子もなく、「私ね、決めたの!」と突然こぶしをぐっと握りしめた。
「みっくんはまだ2年生だから、卒業までまだ2年近くあるでしょ! だから、別に無理に諦める必要ないんじゃないかーって」
「は?」
「え?」
俺と中条から、驚きと疑問の声が漏れ出るも、ひよりは意に介していないように続ける。
「今は振られちゃったけど、この先みっくんの気持ちがどうなるかなんて誰もわからないじゃない。もしかしたら、私のこと好きになってくれるかもだし? 諦めたらそこで試合終了でしょ? なら、私は諦めないから無期限サドンデス戦突入ー!」
どやあ、って顔で胸を張り、こぶしを高々と掲げたひよりに、空いた口が塞がらない俺と中条。
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