第4話

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* 「ってかさ、お前昨日学校でリンスタやってないって言ってなかった?」  俺たちはアクション映画を見た後、駅地下にあるイタリアンレストランに来ていた。店内は、ビストロ風で樽とかワインの瓶とかコルクとかが飾られていてすごくおしゃれだけど活気があって俺たちみたいな学生でも居心地が良い。 「あ、聞かれてた? んー、リンスタは見る専門だから知り合いとは繋がりたくないんだよな」  ふーん、そんなもんか、と思っていると、料理が運ばれてきた。  俺はたらこクリームで中条はアマトリチャーナとかいうトマトベースのパスタにシェア用にマルゲリータを一枚。 「うわ、うまそ」  湯気を立てるそれらに、思わず声がデカくなる。 「見た目と声のギャップ、うける」  口を押えた俺に、中条が笑った。 「悪かったな、miccoが男で」  俺は言いながら、パスタをくるくるとフォークに巻きつけて口に放り込んだ。たらこのぷちぷちとクリームが絡み合って絶妙だ。こんな洒落た店を知ってるなんて、さすが中条。 「いや、それが不思議なんだけどさ、全然ショックじゃなかったんだよなー」  中条は、夢が壊されたとか、思ってないのか不安に思っていたから、意外だった。 「嘘だろ?」  俺だって女だと思ってた好きなアイドルやモデルが実は男でしたーなんてなったら……。  絶対嫌だ。  裏切られたって思うかもしれない。なのに、目の前のイケメンはケロっとした顔でさりげなくピザを取り皿に取り分けている。俺の分も。 「ホントだって、むしろこうしてリアルで会えただけでも奇跡だと思ってるし、さっき言ったじゃん、すげぇ嬉しいって」  はいどうぞ、とマルゲリータの乗った皿をこちら側に置いてくれるものだから、俺はサンキュ、とありがたく受け取った。中身もイケメンとか、やめてくれ、頼むから。 「まぁ、そう言ってもらえるなら、俺としてはありがたいんだけど……」 「それより俺は、そのかわいい顔を傷つけちゃった方がよっぽどショックだった」  俺は顔が熱くなるのを隠す様にパスタをもう一口頬張った。熱いのは、パスタが熱いせいだ。 「中条さ、かわいいとか普通に言えるよな」 「だって事実だし」  いや、そうだとしても、俺は言えないぞ。服とか物にはいくらでも言えるけど。目の前の中条がいくらイケメンだからって、カッコいいとかイケメンだなとか言えない。 「あ、片瀬、俺のパスタ味見する?」 「えっ、良いのか?」  実はうまそうだなーって気になっていた俺はテンションが上がる。俺はピザの皿に少し入れてもらおうと、手にしたのだが、中条はパスタの皿ごと持ち上げてコチラによこした。 「片瀬のも、味見させて」 「あ、うん、はい」  ううむ。  皿ごと交換したは良いが……。  フォークも皿に乗っけたままなのはどうすれば良いのか。  躊躇する俺とは反対に、中条は俺のフォークを掴んでそのまま食べだしたではないか。  か……か、間接キス……! 「あーやっぱたらこクリームは失敗ないな。……ん? 片瀬食べないの?」 「あっ、いや、食うよ、いただきます」  はっず……。  意識してるの俺だけみたいだ。顔から火が出そうになるのを必死に耐えて俺はパスタを味見させてもらう。 「どう、美味い?」 「うん、美味い。さんきゅーな」  聞かれてそう返したけれど、正直味なんか全然わかんなかった。  心臓がバカみたいにうるさい。
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