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土日が過ぎ去り、月曜日。
いつもと変わらない朝、顔を洗ってからリビングへと足を運ぶ途中、家族のものと明らかに違う声が聞こえて、俺のテンションは一気にマイナスへと急降下。
ただでさえ中条のことがあって頭を抱えているというのに、これ以上の面倒ごとは勘弁してほしい。
かと言って、朝食を食べないわけにはいかない俺は、仕方なくリビングへ入っていく。
「みっくん、おはよー」
「なんでいんだよ、ひより」
俺の予想通り、制服姿のひよりが姉ちゃんと楽しそうに喋って笑いあっていた。麦茶を入れに台所に向かえば、「まずは挨拶でしょうが」と母親に頭を小突かれる。危うく麦茶をこぼしそうだった。
「一緒に学校行こうと思って」
勘弁してくれよ。
心の叫びは声にださず、飲み込んだ。もうここに居るのだから、嫌だと言ったところで無駄な抵抗だろう。それよりも、学校までの道のりをひよりとどうやって距離をとるかを考える。
「ひよりんますます可愛くなって~! 今度尊の代わりにモデルどう?」
ひよりは、女同士ということもあり、姉ちゃんとも昔から仲が良くて、家族以外でmiccoが俺だと知る唯一の人物でもある。(あ、今はそこに中条が加わったんだっけ)
幼稚園の頃、女のひよりは成長が早く、俺より背が高かったのもあり、姉と一緒に俺を着せ替え人形にして遊んでいた。
「えぇ、嬉しい! たまちゃんの服、リンスタで見てるけど一回着てみたいと思ってたんだよ! でもいっつもすぐ売れちゃうし学生には手が出ないお値段だからさー」
「そうだったの? 言ってくれたら安くするのに」
そこはプレゼントするんじゃないんだ、と俺は苦笑する。実に守銭奴の姉ちゃんらしいと思った。
姉ちゃんの作る服は、どれも意匠をこらしたデザインのものばかりで一般向けではないが、コアなファンが多く1点ものというのもありそこそこ値が張るため、ひよりの言う通り学生のだせる額ではない。
それに制作に時間もかかるため、販売は不定期かつ争奪戦となる。
「尊もひげが濃くなってきたし、そろそろモデル降板かしらねー」
姉ちゃんの思いがけないセリフに俺はギョッとする。驚きのあまり緩んだ箸の隙間からソーセージがポロっと落ちて皿に逆戻り。
「ぶっ! 尊慌てすぎー」
「いや、だって……」
ちょっと、びっくり。
なにがって、モデルを降ろされる(かも)と知ってショックを受けてる自分にだ。
まぁ、確かにひげは生えているけども、クラスの男子たちと比べたら断然薄いほうだよな?
俺は不安になって、確かめるように顎をさすったが、つるつるとした肌ざわりしかしなかった。
うん、女子だって顔負けの美肌だ。
「冗談よぉ。尊にはまだまだ広告塔で居てもらわなくっちゃ困る」
「miccoの服はmiccoが着てこそ真の魅力が引き出されるんだもんね」
姉ちゃんの隣で、そう鼻息を荒くするひよりに、内心つぶやく。
miccoの専属モデルは譲らねぇからな。
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