第6話

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*  結論から言えば、俺の完敗だった。  あの手この手でひよりから逃げようとしたのに、ひよりはそれも織り込み済みかのようにあの手この手で俺の作戦を阻んだ。  信号が点滅しそうな時に走り出そうと思えば、「あっ、信号変わっちゃう、急いでみっくん」と反対に腕を引かれるし、電車に駆け込もうとすれば、それよりも早く鞄を掴まれて動きを封じられた。  俺は学校に着く頃にはげっそりとして、上履きに履き替える。周りでは、次々と生徒たちが挨拶を交わしながら元気よく通り過ぎていった。 「じゃぁ、またあとでね、みっくん」 「ん? あとで?」  なんのことだ? と顔をあげたが、もうそこにはひよりの姿はなかった。気にはなったが、俺はやっと解放された安堵感でいっぱいになり、追うことはしない。  いつものように、人にぶつからない程度に地面を見つめつつ、教室へと向かい、俺は自分の席に着く。それまで挨拶を交わすのはほんの数人。教室に、中条の姿はまだなく、女子も男子も割と静かだった。  俺は、思い出したようにスマホを取り出して、中条にMainでメッセージを打っておく。  ――今日どこかで少し話したいんだけど。  そうすれば、『昼一緒に食べれる?』と返ってきた。  昼……、またなんでこう、ハードルをあげてくるんだ、こいつは。できるだけ学校では関わりたくないのに。休み時間にちょっと話せればそれで良かったのに。  ただ、お願いしている側というのもあり、俺は仕方なく了承しておく。但し、場所は目立たない所がいい、と思い指定しておいた。あいつのことだ、昼休みになった途端机を寄せてくるのが目に見えている。 ――キーンコーンカーン……  そして、昼休みの鐘が鳴るや否や、俺は準備していた弁当と水筒を手に一目散に教室を抜ける。太一には、今日一緒に食べられないことはあらかじめ伝えておいた。勝手に何かを察した太一は、ニヤリといやらしい顔をしていたがそこは敢えてスルーだ。  ふぅ、脱出成功。  俺は一足先に待ち合わせの場所へと到着。ここは、普段は使われることの無い外階段で、人が来ることはまずないし、階段に座ってしまえば外から見えることもないから安全。 「へぇーこんなとこあったんだなー」
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