第6話

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「へぇーこんなとこあったんだなー」  のんびりとした声に振り向けば、コンビニの袋を片手に中条が立っていた。物珍しそうに辺りを見回している。 「つか、片瀬いつの間にか居なくなってて焦ったんだけど」  俺の隣に座りながら、声かけてくれればいいのに、としょんぼりと言った。  やっぱりな。  俺の予想は的中。  今日だって、中条から視線を感じることが度々あった。俺はそれに気づかない振りをしつつ、極力中条の近くは通らないように心がけていたからか、声をかけてくることはなかったからよかったものの……。  昼を食べに二人でどこかへフェードアウトするなんて、クラス中の視線が俺に突き刺さるだろう。 「目立ちたくないって言ったろ」  それだけ言って、俺は膝の上でお弁当の包みを開くと「弁当いいな」という声が隣から降ってきて見れば、中条はコンビニの袋に手を突っ込んでいる。  カサカサと音を立てながら袋から出てきたのはコンビニのおにぎりだ。 「そうか? 俺は買い弁が羨ましいけどな。好きなもの食えんじゃん」  その日の気分ってあるし。 「まぁなー、でも毎日コンビニってのも飽きるぜマジで」 「じゃぁ、交換する?」 「え、良いの?」 「いいよ」  お互いの昼飯をそっくりそのまま交換すれば、中条は何度も何度も、うまっ! と声をあげて喜んで食べていた。俺は俺で、久しぶりのコンビニのおにぎりと菓子パンというジャンキーな昼食を喜んで食べた。  隣の芝生は青く見えるってやつ。 「ごちそうさまー」 「ごちそうさまでした」  二人ともあっという間に完食して、腹いっぱいになった。  教室の開いた窓からは、生徒たちの賑やかな声がBGM程度に聞こえるくらいで、春のうららかな風が二人を優しく撫でていく。  なんだか、不思議だった。  言葉を交わさなくても、全然気まずくないなんて。  中条とは、同じクラスでも全くと言っていいほど話したことはなく、ついこの間ぶつかったのがきっかけで一緒に出かけただけという浅い関係なのに、まるで旧知の仲のようだ。 「で、話って?」  直球で来られて、俺はあぁとかうんとかどもってしまう。いざ聞こうと思うと、すごく恥ずかしい。 「あのさ……、俺に彼女になれって、ど、どういうこと?」  この前から気になっていたのに、聞きそびれていたことをようやく口にできた。  あの日――中条にmiccoのことがバレた時――俺はこいつの意図も思惑も確かめることなく、わかったとだけ言って返ってきてしまったから、知りたかった。
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