457人が本棚に入れています
本棚に追加
中条佑太朗(なかじょうゆうたろう)。
明るい茶髪のマッシュヘア。
両耳には複数個のピアス。
その装飾に負けることのない端正な顔は、月9の主役級。
つまり国宝級イケメン。
街中でスカウトされたこと星の数。
しかし、本人は至って興味が無いらしく、気が向いた時だけ単発のモデルを暇つぶし&小遣い稼ぎに受けているとかいないとか。
性格も明るくて社交的。交友関係も広く、トラブルを起こすわけでもなく教師からの評判もいい。
強いて言えば、女と言う女は手あたり次第たらし込む博愛主義者なのが、玉に瑕。
芸能界に入りたくない理由が「女」にあるのでは? と推測されるほどの女たらしでもある。
そんな理由から、この学校でヤツの存在を知らない人は居ないと言っても過言ではないだろう。
友だちもろくにいない地味男子の俺ですら知っているのだから。
「あ、良かった、結構知ってる顔いるー」
顔見知りのクラスメイトの肩に腕を回してそう言いながら、彼は安堵の笑みを浮かべた。
――きゅうぅぅん!
女子たちは両手で胸を押さえて国宝級イケメンを見つめている。
その健気な姿に、聞こえてくるはずのない、乙女たちの胸キュン音が聞こえてくるようだった。
わからなくも、ない。
中条は無邪気で屈託がないのだ。
こんなにも、天真爛漫な男子高生を俺は他に知らない。
だからなのか、生粋の女たらしでも、大きな(ここは重要)トラブルもなく、周りから愛されている。
今だって、中条が教室に入ってきただけで、照度が上がったかのように空間が明るくなるんだ。
まるで、春の陽だまりのような人だ。
教室にいるだけでキノコが生えそうなくらいジメジメとさせてしまう、The陰キャの俺とは関わらない存在。
――――の、はずだったのに……。
まさか、この国宝級イケメンとあんなことになろうとは、この時の俺には知る由もなかった。
最初のコメントを投稿しよう!