第2話

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「尊は、リンスタやってたっけ?」  小説読んでるくせに、さっきからちょいちょい彼らの話題に乗ってくる太一に、「うん」と短く返す。  というか、コバエ〇イホイとか言っといて、太一もその一人になっちゃってるんじゃん。  まぁ、聞き耳を立ててる俺もその人のこと言えないんだけど。 「でも俺は見るだけで投稿はしてないよ。太一は?」 「やってる」 「え、マジで? 意外なんだけど」 「読書アカな」 「あぁ」  納得。趣味読書だもんな。 「おすすめ本とか紹介してる人の投稿見て、次読む小説決めてる」 「活用してるねー」  俺は、miccoのアカウントの反応を見たり、可愛いグッズやお気に入りのブランドの新作チェックしたりする程度。 「かーたせー!」  突然呼ばれて、俺は声の出所を探す。 「こっちこっち」  廊下の窓からクラスの女子が手招きしているのが目に留まり、俺は慌てて席を立った。  えっと、確か……、笹本さん、だったかな。  2週間経ってもまだ顔と名前が一致しないなんてコミュ障か。  廊下に出ると、(たぶん)笹本さんの隣にもう一人、見知った顔がいて納得。 「ごゆっくりー」 「あ、ありがとう」  一応、呼んでくれたお礼を言って、俺は残ったもう一人と向き合った。 「へへ、来ちゃった」  まるで彼氏の家におしかけてきた彼女が言うようなセリフを口にしたのは、家が近所の臼井ひより(うすいひより)だった。いわゆる幼馴染ってやつ。 「ひより……」  ひよりがここに受かったというのをすっかり忘れていた俺は、面食らう。  すっかりJKになったその姿が見慣れなくて、なんだか直視できない。 「つか、呼び出すならMine(マイン)使えばいいだろ」 「だってぇ、みっくんのこと驚かせたかったんだもん」 「あそ、で、なんか用?」 「ひっどーい! 久しぶりの再会にその塩対応はないんじゃない?」  と言われてもなぁ……。 「合格おめでとう。制服似合ってるよ」  少し考えて、なんとかそれらしい話題を出してみる。  昔から可愛かったひよりは、何を着ても似合うんだよな。 「ネクタイずれてる」  言いながら、手を伸ばして整えてやる。 「うん、これでおっけ」 「あ……ありが、とう」  うーん、さっきから通り過ぎる生徒がチラチラと視線を向けてくるのが、気になった。  なるほど、その視線の的はひよりか。
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