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一つしか違わないひよりは、姉ちゃんとも仲がよく、家族ぐるみの付き合いで俺にとっては妹みたいなもんだけど……。こうして改めて見れば、ひよりの可愛さはちょっとレベチかも。
大きな二重の瞳と小さな鼻、薄い桜色の唇がバランスよく配置された、まだ少し幼さを残した『可愛い』と『綺麗』の狭間にあるような顔は、控えめに言っても美少女と呼ぶにふさわしいだろう。
いつの間に染めたのか、明るい茶髪はツインテールに結ばれ、ウェーブを描いて肩に触れるか触れないかのところでふわふわと揺れていた。
既に膝上10センチに仕立てられた真新しい制服のスカートから覗く足は、スラリと細い。
この洗練された美少女と、ぼさぼさ頭の黒縁眼鏡男子というアンバランスな組み合わせもまた注目される一因となっているのだろう。
「ほ、ほら、そろそろ予鈴鳴るから教室戻りな」
視線にいたたまれなくなって、ひよりの肩を持ってくるりと向きを変えて背中を押した。
「えっ、ちょっと、みっくん」
振り返るひよりは不服そうだけど、今はそれどころじゃない。これ以上ひよりと一緒にいるのは、危険だと、俺の中で警鐘が鳴った。
俺の平和な高校生活が危ぶまれるのだけは、ごめんだ。
「ほら、鐘鳴ったから帰れー」
「んもー!」
「じゃぁ、またな」
ぶーたれながら教室に戻っていくひよりを見送って教室に戻った俺は、一瞬固まる。
ひぃっ!
クラスメイト達がこぞって俺を見てる!
気のせいかと思って後ろを振り返ったけど、誰も居なかった。
「なぁっ! 今の誰?」
「めっちゃ可愛かったー! 1年生だよね?」
「何組?」
「えっと……、中学の時の後輩で、何組なのかはごめん知らない」
「なぁ、片瀬、お前まさか……、いや、ないか」
あーはいはい。
付き合ってるのかって聞こうとしたんでしょうよ。
聞くまでもなく、ないですよね。
「なにしてんだ? 授業始めるぞー」
次の授業の先生が現れて、その場は収まる。まだ情報を聞き出そうとする男子から逃れられたことに、俺はほっと胸をなでおろした。
「尊……お前まさか……、いや、ないよな」
席に戻った俺に、太一がさっきの言葉をこれ見よがしに繰り返す。
俺は、お礼に舌打ちを返しておいた。
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