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泣いているココルを見て、キリルはすぐに人間だと分かった。死に絶えたはずの人間が生きていると知り最初は動揺した。殺してしまおうかとも思ったが、森の妖精フーエンに諭され思い止まった。
そして、当時から一緒にいたハーピーのジーナとオークのゴルと共にココルを育てることにしたのだ。
ココルに名を付けたのは、母親代わりのフーエン。彼女は、ココルが「ココの木」の下にいたことからそう名付けた。
そして、キリルが父親。ゴルが兄。ジーナが姉代わりとなってココルの成長を見守ってきたのだ。
「だが……」
と、キリルは思った。
ココルがこのまま成長したとして、その先どうすればいいのか?
この森から出てココルが人間だと分かれば、他の種族に襲われてしまう可能性もある。だが、いつまでも家族ごっこが続くとも思えない。
以前、ココルが言ったことを思い出す。
「ねえ、本当にボクが最後の人間なの? 本当にボクしかいないの?」
人間は、あの『人間戦争』のあと絶滅したはずだ。だが、ココルはこうしてここにいる。もしかしたら、他にも生き残った者がいるかもしれない。
「いずれ、つがいを探して旅立つ日がくるかもしれないな」
キリルはそう言って、少し寂しげな笑みを浮かべた。
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