佳乃先輩は今日も咲かない。

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 雲ひとつない空が嫌いで、いつまでも降り続く雨が好きだ。  眩く照りつける太陽が鬱陶しくて、ほのかな月明かりが安心する。  どんなに辛いときにも美しく咲く桜には、劣等感を抱く。  そんな僕のことを真正面から肯定してくれたのは、後にも先にも佳乃(よしの)先輩だけだろう。  だから今日も、僕は前を向いて歩く。  ――佳乃先輩が、咲かない限り。  永遠に、生き続けるしかないんだ。
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