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「……はぁ。ていうか、どこで手に入れたんですか」
「んふふっ、内緒!」
佳乃先輩は、枝を口元に当ててふんわりと笑う。
すべてが桜色に染まった顔は、この世のどんな天体や自然よりも美しくて。もしも桜が擬人化されたら、こんな風だったら良いのにな、と思う。
「これを、秋くんのとっておきの死に場所に埋めましょう! そしたら、いつかそこに、満開の桜が咲くから。その時に、堂々と死んでくださいませ」
佳乃先輩は、満面の笑みで、僕の胸に枝を押し付けてくる。
「……え。僕、ソメイヨシノが咲くまで、死ねないんすか」
「そうだよ! 私がずーっと、そこで見張ってるんだからね!」
……どうやら、佳乃先輩はこの小さな枝を、墓標にしたいらしい。
一体、いつから持ち歩いていたのだろう?
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