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「秋くんの目が、私は好きだなぁ」
佳乃先輩は、うっとりとした顔つきで、俯いている僕の顔を覗き込む。
……こういう、すぐ好きだとか口走る人、苦手だなぁ。
「この腫れぼったい一重がですか」
「んふふっ、そういうんじゃないよ! なんか、こう……気だるげというか。それでいて、達観しているというか……」
もっと適切な言葉を探るように、顎に手を当て、ゴニョニョと呟く先輩。
思わず自嘲した。
「あー……、達観してるってのは、間違いです。ただただ、全てを諦めているだけですから。別に何ひとつ納得はしていません」
言うと、ほう! と興味深そうに頷く先輩。
ちらりと横を見ると、面白い動物でも見つけたかのように、キラリと目を輝かせていた。
「それはそれは、とても親近感を抱きますねぇ」
「……親近感?」
「秋くんは、桜に劣等感を抱くタイプだ!」
ざあっ、と桜の木が揺れ、花びらが舞い散った。
……この人、なんでこんなにも、分かるんだ?
言葉に詰まっていると、先輩は歯を見せて笑う。
「そして私は、桜がこの世でいっちばん嫌いな人! ねっ。気が合うでしょ?」
到底、仲良くなれるとは思えなかった。
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