青年よ愛を抱け!

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「――卒業生答辞。  卒業生、起立! 代表、冴島 航(さえじまわたる)」 「はい!」  爽やかな青空のもと、早春のまばゆい陽射しに包まれる体育館。  入口には鮮やかな大型のアレンジメント花が豪勢に並び、館内の壁は紅白幕で華々しく彩られています。  入口からステージ前までの中央には、花道のように真っ直ぐ赤絨毯が敷かれ、左右に規則正しく配列された椅子に大勢が着席。  おめでたい雰囲気の中にも緊張感が漂っているようです。  教務主任の慎ましい声振りが響き渡ると、威勢の良い返事がひとつ放たれました。  学ランの胸元に花を添えた卒業生321名が一斉に立ち上がると、敏捷(びんしょう)な身のこなしによって生じた一段と(おごそ)かな空気がひと巡り。  右前列なかほどから代表者は凛として演台前へ向かい、紅白のリボンで装飾されたスタンドマイクの前に立ちます。  こちらは男子御三家と称される中高一貫の名門校。現在6年間過ごした学び()を旅立つ卒業式の真っ只中。  さてさて、少々拝見させていただくとしましょうか… 「本日は諸先生方並びに来賓各位の御臨席を賜り、盛大な卒業式を挙行していただき、卒業生一同心より御礼申し上げます――」  丁寧に一言(ひとこと)一言くるんだような(やわ)らげで落ち着いた声の挨拶が、粛然とした空間をぬって参列者の耳に届き始めますと、壇上の校長は元より来賓のお(かた)面持(おもも)ちも()かれていきます。  式場の後方を見渡せば、ダークカラーのフォーマルスーツを着こなした保護者各位がずらりと勢揃い。  我が子の節目に万感(ばんかん)の思いで卒業式に出席している父母も、表情を緩ませて答辞に耳を傾けていました。  しばらくすると…
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