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「大切に守られ今を生きる私たちは愛の結晶です。輝きに満ちた原石であり簡単には崩れない強度も備わっています。
何も恐れることはない!
諸君、今日この学び舎を旅立とうとも、同じ志しで闘い抜いた仲間がいたことを忘れず、私たちの活躍を願い導いてくださった恩師への敬意と母校への誇りを持ち、己の力を信じて何処までも何処までも力強く羽ばたいていこうではないか!
そして大きな愛を抱き、世界を進化させようではないか!
たとえ離れようとも、友として諸君の挑戦を応援し温かな幸せを心から願っています。
最後になりましたが、皆様のご健勝と学園のさらなる発展を祈念し、答辞のことばとさせていただきます。
学園第100期生・冴島 航」
結びの言葉が式をまとめ、ふうわりとした余韻の中で式辞紙を静かに閉じました。
校長先生、改めて姿勢を正し卒業生を見渡します。
感銘を受けた卒業生の胸は大きく膨らみ、輝いた瞳は冴島くんの背中を見つめています。
さあ!最後の…
「―――卒業生一同、( 礼! ) 」
『 好きっ 冴島!!! 』
おっと、心の声が勝って聞こえてしまいました。一糸乱れぬ立派な礼を披露してくれましたね。
役割を果たした冴島くんはにこやかに席へ戻ります。皆も晴れやかな表情になりました。
卒業おめでとう。
素晴らしい卒業式でした!
パチ パチ パチ パチ パチ…
―――その日、卒業式の参列者は、天から温かな拍手が聞こえたような気がしたという……
青年よ愛を抱け!
最後の言葉にそれを残していたら、、、
愛で満ちた平和な世界に、子供たちは羽を広げることができたのでしょうか―――。
そこはかとなく風に揺られて上の空。
何処までも青く澄みきった宙に、白い羽根のような筋雲が浮かんでいます。
青年たちよ―――
きっと、強く羽ばたけることでしょう!
眩しい光が影をもあたため、寒さに凍える大地にも桜の便りが届きそうです。
きらめいた春は、もう、すぐそこまでやって来ています。(終)
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