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入学時より活躍を目の当たりにしてきた冴島くんへの称賛でしょうか。あちらこちらで隣同士で肩を寄せ合い、遠慮がちにヒソヒソとしています。
伝統として答辞を読む代表者は首席卒業生の名誉でもあるのですね。
最後列の奥様方も口元を手で隠しコソコソと会話が始まりましたよ。
(大田さん、大田さん)
(何です?金子さん?)
(冴島くん、米国最難関のYMCA大学に合格したのはご存知でしょ?)
(ええ。確か早期専願で12月に合格したとお知らせがPTA通信で。育成会がお祭り騒ぎだったとかなんとか…)
(なんと、早期合格者は日本人で一人だけなんですってよ!)
(さすがだわ!先程の表彰も総ナメでしたものね)
(あちらは入学が秋でしょう?)
(ええ。日本は4月でアメリカは9月が一般的ですから、ブランクはどうするのかしら?)
(それで近々起業するんですって!すでに有名企業がスポンサーになっているらしいわ!)
(( ……凄いわねぇ ))
仲良し奥様方が口を揃え感嘆のため息をこぼしました。
息ぴったりとは正しく長い付き合いの母友のようで、どれどれ?お二人の息子たちにもフォーカスを当てて見ましょう…
一番後ろから壇上前へ。冴島くんと同じクラスにいました。
大田くんと金子くん、こちらも隣同士で勇ましく直立しております。おや?
・・・仲良く、がっちり手を繋いでいますね。
えー、こちらは男子校ですが…
(斯々然々)なるほど。
幼稚舎から長きに渡り親友として切磋琢磨してきた二人、地方大学にそれぞれ進学が決定し離れがたい気持ちが限界突破。
式典前に告白をして新たな絆が生まれたようです。
ふむ。昨今ようやく理解増進の動きを見せたばかりで、まだまだ前途多難な世の中かもしれませんが…
マジョリティは流動的で変化し、コミュニティ社会は進化する。
個々のビジュアルより心の繋がりが重視され、多様性の尊重に準ずる将来も近いと良いですねぇ…
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