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「仲間、と一概に言うは容易い。比較と優劣の競争を強いられる社会構造では、常にライバルであるのです。
今日心を分かち合った仲間は最も近く親しき者のはずが、明日には競い合うライバルで心を許せぬジレンマを幾度覚えたことでしょう。
克己心と向上心、同じ志しを持つがために譲れない、確固たる自信も必要でありました。
諸君、君たちが強敵であったからこそ、私は闘志を失わず己を成長させることができた。
ありがとう、諸君一人一人が唯一の存在だ」
1番になりたい、次こそ冴島に勝ちたい、と敵視してきた彼に敬意を示され、谷派のメンバーも目が潤んでいるようであります。
何を隠そう年末に冴島くんの合格を耳にし、絶対に第一志望に受かってみせる!と人万倍に闘志を燃やしたのは彼らであるのです。
皆が日本一の大学や医学部に合格しました。
良き仲間とライバルに恵まれていたからこそ、信念を曲げず目標達成を遂げることができたのだと感慨深く振り返ります。
決して嫌いなわけではない。そう、心を許すことができず虚勢を張り続けたのだ。
フンッとやや照れながら黒縁眼鏡のブリッジを人差し指で軽く押し上げました。
式後には冴島くんと握手を交わし健闘を励ましあう、あわよくば真の友になる!
と心に誓う桐谷くん並びに谷派のメンバー。
素晴らしい!
それでこそ紳士たる振舞いです。
教養が高いだけでなく礼儀も備わっていなければ、立派な男子とは言えません。
ワタシが感心する一方で、冴島くんの謝辞は先生方へと続いておりました。
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