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「瞳を閉じれば、いつでも貴方の姿が、すぐそこにあるようで。
体中ほとばしる感情っ、それは熱く駆け巡る純情っ、そして夢でも会いたい心情っ」
・・・・・ん?
一同、ポカンと。
卒業の定番曲の歌詞かと思いきやラップ調の語り口。
冴島くん、式辞紙を下ろして胸に右手を添え、答辞を脱線してしまいましたよ。
「この、胸を熱く焦がすかと思えば擽られるようにもどかしく、時に脈を速く心臓を締めつける痛みは病気を疑いましたが違いました。
疲弊した脳と心を癒し自分でも底知れぬ力を無限に与えてくれる、これらが特定する対象にのみ作用する場合、それを恋慕というのではなかろうか……
私は恋を知り、愛という感情が芽生えたことを自覚しました。
私は、橘ミドリ先生に愛を抱いているのです!」
!!!!!!!?
色めき立った会場の一同、ミドリ先生に熱視線を向けました。
皆が瞬時に首を振るので式場にざわめきが起こったほど。
注目の的になり彼女はぽっと頬を赤らめ、淑やかな笑顔で恐縮しています。
その隣でわなわなと拳を震わせているのは、数学教論の前田 淳先生。
(斯々…省略)ミドリ先生とは同期仲間で教員業務に励む傍ら、密かに思いを寄せタイミングを見計らっていたと。
ここにも今日ミドリ先生に告白を決めていた男子がいたのですね。
前田先生、冴島くんに先を越され辛酸をなめる結果となってしまったようです。
あらあら、卒業生の中にも悔しさの表情を滲ませている男子が何人も。
冴島くんには敵わないと嘆息をついています。
ミドリ先生は学園のマドンナだったのですね。
初恋に目覚めた冴島くん、ミドリ先生に恋焦がれながら高校生活を送ったと。
激動する恋愛感情を抑えきれず、尚も愛の叫びは止まりません。
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