青年よ愛を抱け!

9/11
前へ
/11ページ
次へ
「愛する人と共に歩む未来を見据え、私は日々精進してまいります。  愛する人を守るため、様々な知識を学び、知恵をつけ幅広く経験を積み、徳を高め慈愛に満ちた成人男子になれるよう努めます!」  ワォ!  冴島(さえじま)くん、まるで大物舞台俳優の見せ場のようなオーバーリアクション。  メラメラと燃え上がっていますね。  ()れも其のはず、頭の中ではミドリ先生のフラメンコが離れませんから。  赤色のスカートが揺れボリューミーなフリルが、荒波かのように大きくうねりを上げる!  リズミカルに小刻みな軽快音を打つ手拍子、  パンパン パパパッ パンパンッ♪  地を震わせ這い上がって迫りくるステップ音、  タン タタタン タン タンッ♪  二つの轟きは否応(いやおう)無く熱情を湧き起こす! 「私はもう、ミドリ先生しか考えられないのです。貴方(あなた)以外の女性は愛せません!  どうか私の思いを受け止めて貰えるよう夢に(いだ)いて!」  校長先生、たらっと流れた冷や汗を拭いましたね。  チラチラッと司会の教務主任を伺いますが…  彼は切ない表情で天を見上げています。  教務主任は冴島くんのYMCA大学合格を支えた陰の立役者。海外の大学を受験する生徒をサポートしてきたベテランです。  受験の準備段階から冴島くんの恋心を承知していたのですね。  なぜなら冴島くんの大学出願時の自己推薦文であるエッセイは、なんとミドリ先生への愛で溢れていたという。  純朴さに心打たれて感極まる教務主任。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加