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 何となく、義田がいなくなるタイミングを見計らった。そのまま昼休みに差しかかった。 「寺井くん」  彼の背中に近づいて声をかける。 「はい」  短く返事をしてこちらに顔を向けた。俺は覚悟を決めて息を吸う。 「飲みにいく話、嫌だったら行かなくてもいいよ。嫌じゃなかったら、来てくれたら嬉しいけど」  相手はただまばたきをするだけだった。目を伏せると「あの」と遠慮がちに続ける。 「義田さんもいるってことですか?」 「義田? うん、いるけど」  寺井くんは一瞬だけ目を合わせると、左右に泳がせた。  ああ、この反応は。 「義田のことは苦手?」  相手は視線を逸らしたまま頷いた。 「藤宮さんだったら全然嫌じゃないです、けど」 「そっか」  そういうことだったのか。俺は何度も頷いた。 「じゃ、二人で行こうか」  寺井くんは顔を上げた。そのとき、彼の顔にぱっと花が咲いた。  俺の予定がまた一つ増えた。「部長と飲みにいく」の他に、寺井くんとも。  これから少しずつ、皆の素顔を知っていけばいいか。
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