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 先輩たちと別れ、街灯がぽつりぽつりと灯る道をのろのろ歩いた。  結局、覗きにきた部長を気遣い、武内さんが席を交代してしまった。 「二人とも、ビールは飲まなくていいの?」  俺と義田は、何度部長に訊かれたことだろう。いえ大丈夫です、と答えれば、そうかそうかと頷く彼ではあった。が、そのやり取りを忘れたのか、それとも納得するふりをしていただけだったのか、暫くするとまた同じ問いを投げかけてきたのだ。 「ビールなんて、飲まなくてもいいだろ……」  部長への嘆きが夜道に吸い込まれた。  どうして貴重な時間を、どうでもいい人に充てなければならないのだろう。部署全体の飲み会が、次で最後にならないだろうか。 「ビール強制はきついよな。部長の声も大きすぎだし、構ってちゃんだし」  隣の義田も溜め息をついた。  酒気を帯びた部長はさらに声が大きくなり、あまつさえ自慢話を披露しだすのだ。 「部署の飲み会とかほんとめんどくさいよなあ」  義田がひんやりとした夜の空気に愚痴を放つ。俺も彼に同意した。 「仲のいい人たちだけだったらいいけど」 「それな」  すかさず彼が人差し指を向けてきた。 「せめて女子がいればなあ。二十代の最後くらい華々しく終えたいよ」  彼は肩を落とした。一滴も飲んでいないというのに、大げさにふらりとよろけた。お調子者の彼らしく、思わず頬が緩んだ。  まあ、女子がいたらそれはそれで気を遣いそうではあるが、部長に気を遣うよりは遥かにマシだ。  義田は再び溜め息をつく。 「前島部長は特に飲み会が好きだよな」  ただでさえあの人めんどくさいのに、と言葉を続けた。 「今度は二人で飲むか」  俺が提案すると、相手はシャキーンと効果音が鳴りそうな勢いで背筋を伸ばし、「おうよ」と元気な返事をした。 「この前入ったばっかの新人も誘おうぜ」  義田がにっと歯を見せて笑った。 「お、寺井(てらい)くんか」  控えめに微笑む彼が浮かんだ。すみません、ありがとうございます、ときっちり言うし、仕事にも熱心に取り組んでいる。 「それいいな」  俺もつられてにやりとした。
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