2

3/6
前へ
/11ページ
次へ
「最後の飲み会、どうすんだ?」  義田がにやにやしながら訊いてきた。 「ああ、それなら」  参加することにした──事実を伝えると、相手は目を丸くした。 「てっきり不参加にするもんだと……。あ、あれか? どうせ最後だから、部長をおちょくりにでもいくのか?」  そうなんだろ、と肘で俺の二の腕をつついてくる。俺は口を噤んだ。  義田は部長の本心を知らないし、知ろうともしていない。いや、俺だって偉そうなことは言えない。寺井くんの本音さえ探ろうとしなかったのだから。  俺が口を開こうとすると、義田は急に真面目な顔をした。 「もしかして部長とか、誰かに強要されたんじゃないよな? もし少しでも何かあるなら、ちゃんと相談したほうがいい。会社に相談窓口もあるし」  あそこはそれなりに機能しているし、管轄はどこどこで、と続けた。彼が相談窓口にやたら詳しいことに首を捻りつつ、それはないよ、と否定した。 「それにしても」  彼は腕を組んだ。 「よくもまあ、参加する気になったよなあ。俺は不参加で提出したよ」  よくもまあ、の部分を変に強調した。何だか嫌な言い方だ。  俺は口をへの字に曲げた。寺井くんのことを言ってしまおうかと思ったが「はいはい」とだけ返した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加