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「最後の飲み会、どうすんだ?」
義田がにやにやしながら訊いてきた。
「ああ、それなら」
参加することにした──事実を伝えると、相手は目を丸くした。
「てっきり不参加にするもんだと……。あ、あれか? どうせ最後だから、部長をおちょくりにでもいくのか?」
そうなんだろ、と肘で俺の二の腕をつついてくる。俺は口を噤んだ。
義田は部長の本心を知らないし、知ろうともしていない。いや、俺だって偉そうなことは言えない。寺井くんの本音さえ探ろうとしなかったのだから。
俺が口を開こうとすると、義田は急に真面目な顔をした。
「もしかして部長とか、誰かに強要されたんじゃないよな? もし少しでも何かあるなら、ちゃんと相談したほうがいい。会社に相談窓口もあるし」
あそこはそれなりに機能しているし、管轄はどこどこで、と続けた。彼が相談窓口にやたら詳しいことに首を捻りつつ、それはないよ、と否定した。
「それにしても」
彼は腕を組んだ。
「よくもまあ、参加する気になったよなあ。俺は不参加で提出したよ」
よくもまあ、の部分を変に強調した。何だか嫌な言い方だ。
俺は口をへの字に曲げた。寺井くんのことを言ってしまおうかと思ったが「はいはい」とだけ返した。
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