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「皆さんは何かないです? ないなら、フライドポテトをまず一つ」  俺ははっと顔を上げた。確かに今「フライドポテト」と聞こえた。部長が目を細めてにんまりと笑っていた。  それを合図にするかのように、唐揚げ、イカ唐揚げと次々に注文が入り「揚げ物ばっかりだな」と笑う課長の突っ込みも挟まれた。 「部長ってフライドポテト好きですよね。俺も好きですけど」  先輩の一人が声を弾ませる。 「だからお腹が育つんだよねえ」  部長も苦笑いしながらも、楽しそうだった。  湯豆腐が来て、卵焼きが置かれる。焼き鳥が運ばれたときには、ちょっとした歓声も上がった。 「焼き鳥旨いなあ」 「ビールもいける」  先輩たちも口々に言う。 「藤宮くんは? どう? 楽しんでる?」  部長がフライドポテトを取り分けながらち らりとこちらを見る。子供のように、とは失礼だが、それほど目を輝かせてせっせと自分の皿に運んでいる。  呆気に取られていると、部長は「あ」と声を上げて手を止めた。 「ごめん、ポテト、独り占めしてた。藤宮くんも食べて」  早くしないと妖怪ハラフトシに取られちゃうぞ、と言葉を続け、にやにやした。  部長が妖怪だとしたらずいぶん優しくて人懐っこい妖怪だな、などとこれまた失礼ながら思ってしまった。 「ハラフトシって、部長それいつも言ってますよね」  課長が突っ込みを入れる。課長のその突っ込みもいつも通りだと、さらに先輩たちの突っ込みが入った。
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