第1話_閉ざされた地で

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「…実際のところ、こっちの攻撃は全然当たらねぇから、うざいには違いねぇ」 「だなー。(あいつ)は鳴くだけで全然しゃべんねぇし。実は[侵略者]じゃないんじゃねぇか? あいつも羽も[異形]で、"親玉"は別にいたりして」 サルファーより箇所は少ないものの、ロードナイトもオニキスも全身に傷を負っていて、翻して再び体勢を整える巨鳥を恨めしげに見やっていた。 「――いえ、間違いなくあの鳥が[侵略者]です。[あれ]から生み出されている羽が[異形]…体躯の一部を使ってるか、共生状態にあるタイプだと思います」 オニキスたちの疲労感滲ませるぼやきに、また別の人間が脳内から応える。 彼らの足元真下には、巨大な竜巻が発生し、周囲をおびただしく舞い散る"羽毛"を一枚たりとも侵入を許さないその渦の中心には、背丈を超える斧槍を持つ者が、そして彼の後方には別の人間が、両手に小さな得物を携え立っていた。 斧槍を垂直に立て、竜巻を制御する『セイバーエピドート』に守られるように位置し、『セイバーアズライト』は両手で持つ手のひらサイズの短剣を両眼の前に配し、上空に羽ばたく巨鳥へと掲げていた。 総計5名と思われる彼らが組む陣形の最奥にいる彼へ、ロードナイトが声を掛ける。 「そっか。…まだかかりそうか?」 「悪い、あと少しで判る。…もうしばらく持ちこたえてくれ」 「了解!」 竜巻の外にいる仲間の力強い応答を耳に、アズライトは額に汗を滲ませながら、その透き通る刀身越しに両眼を凝らしていた。 空間を覆い尽くす"羽毛"は[異形]と呼ばれ、それらを使役する"巨大な鳥"は[侵略者]と呼ばれている。 彼らは『転異空間』とはまた別の次元に存在する[異界]の生命体あるいは物体で、生命維持を目的として『現実世界』へ現れ、"狩場"を造って人間を襲い、場合によっては土地を荒らしたり襲った人間を獲物として[異界]へ連れ帰るなどの蛮行に及ぶ、害悪的な存在である。 それぞれのカラーリングを施した揃いの戦闘スーツに身を包む彼らは、[異界]から侵入する[侵略者][異形]から『現実世界』を守護する役目を帯びた『ガイアセイバーズ』というヒーロー達である。 ヒーローとは称するものの、先述通り『現実世界』からは完全に視界外にある『転異空間』でのみ活動するため、その存在を誰にも知られることは無く、表の顔は周りの人々と変わりなく、普通の日常生活を送る青年達である。 今いる『転異空間』は、彼らが造り出すいわば戦闘フィールドであり、侵入した[異界の者たち]を呼び込むことによって『現実世界』へ干渉することなく戦闘し、[異界]へ送り返す、またはその場で消滅させ、人々の暮らす『現実世界』を人知れず護り続けている。
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