38人が本棚に入れています
本棚に追加
第14話_闇の救い手
「…さて」
腹を満たした[木蔦]は蒼矢の股から頭部を抜き、精液に塗れた口を拭う。
「お前はもう用済みだな。…この場で息の根を止めてやろう」
ぼろぼろになった身体を蔦へ預け、力無く揺れる青のセイバーの真正面に立ち、片腕を振るい、蔦絡みの大剣を形作る。
切っ先を宙へ向け、沈黙するその首元目がけて振り下ろす。
「!」
と、アズライトと己の体躯との間に、にわかに小さな黒い影が入る。
それは視界を妨害するようにちらつき、[木蔦]の目の高さに動き回る。
「ちっ…!」
[木蔦]は顔貌にみるみる苛立ちを表出し、舌打ちをすると大剣を周囲へ薙ぎ、黒い点を追い払う。
そして一時遅れて別の気配を察知し、真上へ首を上げた。
上空から重力より高速で降下するそれは、漆黒の眼に殺意を帯び、腕に備えた巨大な鉤爪を[木蔦]の顔面へ振り下ろす。
「!!」
轟音と共に緑の地は大きくめくれ上がり、周囲に土煙があがる。
[木蔦]は当たる寸前で脇へ飛び、直撃は避けたものの一部が掠めたのか、表皮を抉り取られ体液が漏れ出る腕を押さえる。
土埃が地に降り視界が開ける中、現れた黒いセイバーは、ゆっくりと歩を進め、[木蔦]へと近付いていく。
「…逃げんなよ。余計な体力使わすんじゃねぇ」
影斗――セイバーオニキスは歩きながら両手甲の装具『暗虚』の鉤爪を地へ落とし、真新しい爪を新たに生やす。
[木蔦]は患部へ蔦を絡めて覆い体勢を戻すと、両腕に蔦を纏わせながら身構えた。
最初のコメントを投稿しよう!