第14話_闇の救い手

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第14話_闇の救い手

「…さて」 腹を満たした[木蔦(ヘデラ)]は蒼矢(アズライト)の股から頭部を抜き、精液に塗れた口を拭う。 「お前はもう用済みだな。…この場で息の根を止めてやろう」 ぼろぼろになった身体を蔦へ預け、力無く揺れる青のセイバーの真正面に立ち、片腕を振るい、蔦絡みの大剣を形作る。 切っ先を宙へ向け、沈黙するその首元目がけて振り下ろす。 「!」 と、アズライトと己の体躯との間に、にわかに小さな黒い影が入る。 それは視界を妨害するようにちらつき、[木蔦(ヘデラ)]の目の高さに動き回る。 「ちっ…!」 [木蔦(ヘデラ)]は顔貌にみるみる苛立ちを表出し、舌打ちをすると大剣を周囲へ薙ぎ、黒い点を追い払う。 そして一時遅れて別の気配を察知し、真上へ首を上げた。 上空から重力より高速で降下するそれは、漆黒の眼に殺意を帯び、腕に備えた巨大な鉤爪を[木蔦(ヘデラ)]の顔面へ振り下ろす。 「!!」 轟音と共に緑の地は大きくめくれ上がり、周囲に土煙があがる。 [木蔦(ヘデラ)]は当たる寸前で脇へ飛び、直撃は避けたものの一部が掠めたのか、表皮を抉り取られ体液が漏れ出る腕を押さえる。 土埃が地に降り視界が開ける中、現れた黒いセイバーは、ゆっくりと歩を進め、[木蔦(ヘデラ)]へと近付いていく。 「…逃げんなよ。余計な体力使わすんじゃねぇ」 影斗(エイト)――セイバーオニキスは歩きながら両手甲の装具『暗虚(アンキョ)』の鉤爪を地へ落とし、真新しい爪を新たに生やす。 [木蔦(ヘデラ)]は患部へ蔦を絡めて覆い体勢を戻すと、両腕に蔦を纏わせながら身構えた。
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