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「ふん、『仲間』か。今しがたの虫螻はお前が躾けたか? この間も[俺]の周囲を探らせてたな、気付いていたぞ…そのまた"使い"だったようだがな。その場で握り潰してくれたわ」
「…」
「答えられないということは、肯定と受け取ろう。…全く、ひとのプライバシーを覗くような姑息な真似に及ぶだけでは足らず、ひとり捕られたくらいで血相を変えて干渉してくるとはな。セイバーとやらはどれも随分と余裕が無いようだ」
「…よく口が動く[侵略者]だな。耳障りだ、黙って塵に還ってろ」
影斗がそう言い終るや否や、[木蔦]は両腕の蔦を瞬速で繰り出す。
オニキスは身体の前で暗虚を交差させ、襲い来る蔦の束を鉤爪に絡め取る。
双方蔦を引っ張り合い、力が拮抗する中、鉤爪が徐々に握られ、蔦の繊維がぶちぶちと千切れ始める。
「それで捕ったつもりか?」
[木蔦]は口端を上げ、全身から更なる蔦を生やし、動けないオニキスへ追撃をかける。
無数の蔦がオニキスを襲い、一瞬にして全身に巻きつき、身体を宙へ浮かす。
装具を取り落としてかき消し、だらりと下がる脚を見上げ、[木蔦]は声をあげて嗤う。
「セイバーとは単細胞で容易い奴ばかりだな。…しかし口は悪いが、体躯はほど良く厚みがあり、肉体が引き締まっていて俺好みだ。『アズライト』を餌に、手籠めにしてもいいか…」
蔦に覆われたオニキスへ嫌らしい視線を浴びせ始めた[木蔦]だったが、みずからの身体の先端でにわかに起きる異変に、目線を止めた。
オニキスを拘束していた蔦は、深緑から徐々にどす黒く色を変え、萎び、ぼろぼろと砕けて落ちていく。
身体に絡んでいた蔦を『毒』で腐らせたオニキスは、周囲に紫黒色の霧を漂わせ、ゆっくりと降下する。
地に降り立つと、顔貌を固まらせる[木蔦]を静かに見据え、ばさりと伸びる前髪の間から片目だけを覗かせ、闇色に光らせた。
「…てめぇは塵に刻むだけじゃおさまらねぇな」
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