第14話_闇の救い手

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「ふん、『仲間』か。今しがたの虫螻(むしけら)はお前が躾けた(・・・)か? この間も[俺]の周囲を探らせてたな、気付いていたぞ…そのまた"使い"だったようだがな。その場で握り潰してくれたわ」 「…」 「答えられないということは、肯定と受け取ろう。…全く、ひと(・・)のプライバシーを覗くような姑息な真似に及ぶだけでは足らず、ひとり捕られたくらいで血相を変えて干渉してくるとはな。セイバーとやらはどれも随分と余裕が無いようだ」 「…よく口が動く[侵略者(ゴミ)]だな。耳障りだ、黙って塵に還ってろ」 影斗(オニキス)がそう言い終るや否や、[木蔦(ヘデラ)]は両腕の蔦を瞬速で繰り出す。 オニキスは身体の前で暗虚を交差させ、襲い来る蔦の束を鉤爪に絡め取る。 双方蔦を引っ張り合い、力が拮抗する中、鉤爪が徐々に握られ、蔦の繊維がぶちぶちと千切れ始める。 「それで捕ったつもりか?」 [木蔦(ヘデラ)]は口端を上げ、全身から更なる蔦を生やし、動けないオニキスへ追撃をかける。 無数の蔦がオニキスを襲い、一瞬にして全身に巻きつき、身体を宙へ浮かす。 装具を取り落としてかき消し、だらりと下がる脚を見上げ、[木蔦(ヘデラ)]は声をあげて嗤う。 「セイバーとは単細胞で容易い奴ばかりだな。…しかし口は悪いが、体躯はほど良く厚みがあり、肉体が引き締まっていて俺好みだ。『アズライト(氷使い)』を餌に、手籠めにしてもいいか…」 蔦に覆われたオニキスへ嫌らしい視線を浴びせ始めた[木蔦(ヘデラ)]だったが、みずからの身体の先端でにわかに起きる異変に、目線を止めた。 オニキスを拘束していた蔦は、深緑から徐々にどす黒く色を変え、萎び、ぼろぼろと砕けて落ちていく。 身体に絡んでいた蔦を『毒』で腐らせたオニキスは、周囲に紫黒色の霧を漂わせ、ゆっくりと降下する。 地に降り立つと、顔貌を固まらせる[木蔦(ヘデラ)]を静かに見据え、ばさりと伸びる前髪の間から片目だけを覗かせ、闇色に光らせた。 「…てめぇは塵に刻むだけじゃおさまらねぇな」
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