第19話_阻止奪還

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「!」 (アキラ)と同じように車中へ視線を泳がせた葉月(ハヅキ)は、真ん中辺りにひらめく黒い蝶を認めた。 思い当る節があったのか、蝶へ見張る葉月の目が徐々に開けていく。 「…どこかで聞き覚えのある声だったけど…、まさか」 「あんたが考えてる通りですよ。…お久し振りです」 「…!? ちょうちょがしゃべったぁ!?」 小さな蝶が「(リン)」だと理解した葉月はそのまま顔を凍らせ、彼そのものが初見の陽は事実関係がのみ込めず、ひとの言葉を話す蝶にただ度肝を抜かれていた。 「すげぇっ…何のファンタジー!? ゲームの中の世界みたいじゃん!!」 「うるさいな。ひとの目の前で狭い空間にそぐわない大声出すな、耳障りだ。これだからガキは嫌いなんだ」 「ええぇっ!? ちょうちょなのに"ひと"って…。それに、口悪…」 鼻先に羽ばたく蝶から可愛らしい声で毒づかれ、興奮しかけたところから光の速さで興醒めしていく陽を置き、鱗は影斗(エイト)の肩へと飛んでいく。 「ここに[木蔦()]と…(レツ)が?」 「先ほど入っていったばかりだそうです」 「…」 鱗の返答を聞いた影斗は、一瞬ちらりと蒼矢(ソウヤ)へ視線をやり、何事も無かったように前へ向き直した。 蒼矢が小首を傾げる。 「…? なんですか?」 「…いや、なんでも」 「つまり、火炎のセイバーが"本命"ってことですよ」 はぐらかそうとした影斗の横から、鱗が蒼矢へ答える。 要領を得ない彼へ、鱗は淡々と続けた。 「あんたを含めて、今まで[奴]は必ず搾取対象と外で会ってた。ラブホとか、公共トイレとか、そのまま野外とか。…自分の住まうところへ連れ込んできたのは、これが初めてですね」 「……!」 「その辺にしとけ、鱗」 意味を理解して言葉を失う蒼矢を見、影斗は鱗を軽くたしなめる。 ついで、会話を注意深く聞く葉月へ振り向いた。 「烈が『セイバー』だとは割れてねぇ。一旦このまま(・・・・)でいくから、『転異空間(あっち)』で余計なことは口走るなよ。陽も」 「…了解」 「よくわかんねぇけど、了解ー」 そうしてセイバーたちの意思統制が取れた時、彼らが各々携帯する起動装置が発光し始めた。 「っ…!」 鉱石はそれぞれのパーソナルカラーで光り、蒼矢はみずからの青く輝く鉱石へ目を落とし、息を飲む。 なんとなく状況を理解し始めていた葉月と陽も、そのモーションを受け止め、緊張感を表出していた。 「…行くぞ」 そう小さく呟くと、影斗は胸元から黒い鉱石を抜き出し、強く握った。
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