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地上で『索敵』し始める蒼矢へ葉月が鉄壁の風の防御壁を施し、その直上では[木蔦]を中心に影斗と陽が飛び、代わるがわる攻撃を繰り返していく。
[木蔦]は蔦を巧みに操り、蔦を伸ばして鞭のように振るう遠隔攻撃と、腕を長剣と盾に変化させた近接攻撃の両方を同時に展開させ、浮いている地点からほとんど動くことなくセイバーふたり相手に対等以上にやり合っていた。
近接戦闘が主なオニキスとサルファーは、遠隔攻撃により満足に近付けず、接近出来ても決定打を喰らわせることが出来ず、苦戦を強いられる。
「くそー! 切っても切っても再生しやがって!!」
「落ち着けってお前は。切断出来るだけマシだろうが」
サルファーは上手くいかない立ち回りに苛立ち、さほど時間を掛けずにかんしゃくを起こし始める。
むかっ腹を立てる彼へ恨み節を吐きながら、オニキスは[木蔦]へ仕掛ける機を探る。
拮抗する前衛の交戦が続く中、アズライトの口が開いた。
「[異形]の弱点属性は、火炎と毒です。急所部位はまだ見当たりません。[侵略者]と融合していることで、暗まされてる可能性があります」
「とりあえず属性は読み通りだな…サルファー、お前は蔦の先っぽだけ相手してろ。[奴]に近付くなよ」
「! 了解」
そう指示を投げると、オニキスは陣形を解き、[木蔦]へ接近していく。身体中から紫黒の霧が滲んで漂い、宙を飛ぶオニキスの身体を覆っていく。
毒属性を使い始めたオニキスの変化をサルファーは素早く察知し、飛び交う蔦の処理に集中し始める。
しかし、オニキスの毒攻撃への移行を機に戦況は安定するかに見えたが、今まで固定砲台に徹していた[木蔦]がにわかに動き始め、距離を離していたサルファーの元へ飛ぶ。
「!? はっ…!?」
自分へ向けて急接近してくる[木蔦]の動きに、サルファーは虚を突かれ動揺したものの、間一髪で高速で近付くそれを避け、再び大きく距離を離す。
が、[木蔦]は再びサルファーの飛んだ方へ狙いを定め、その巨体をぶつけていく。
その奇怪な動きと真顔で迫る顔貌に、サルファーの背筋が冷えていく。
「ちょっ…なんなんだよ、こいつ…!」
サルファーひとりへ狙いを定め、彼を追い回し始めた[木蔦]の様子を見、オニキスは舌打ちすると纏わせた毒霧を薄めてかき消していき、追われるサルファーの元へ援護に飛んだ。
そんな前衛の戦況を見上げ、エピドートが眉を顰める。
「…読まれてるね、完全に。オニキス対策を講じてきてる」
「"無差別"なのも把握済か。うぜぇな」
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