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地上から引き続き『索敵』を試みていた蒼矢は、限りなく確信に近い推論を持って、脳内からセイバーたちへ呼び掛けた。
「おそらくですが、[異形]は[侵略者]の手足になるためだけのもので独立性が無く、思考部位が無いため急所もありません。操る[木蔦]は[異形]に寄生する形で使役していて、『転異空間』内に気配が感じられないことから、実体が無いものと思われます」
「…!? 実体が無い…"思念体"だけの[侵略者]だと…!?」
「! 成程。前戦で姿を見ない内に逃げられてしまったのは、それが理由か…」
アズライトの考察に、影斗と葉月は各々別の反応を見せつつも得心する。
彼らの呼応に頷くと、アズライトは続けた。
「体躯が無いので、[木蔦]にも急所の概念はありません。代わりに、[異形]と分離した[侵略者]の思念体全てが急所です。寄生形態を解かない限り、急所は隠されたままで狙えない」
「…恐らく歴代最弱だろうが、逃がしたら相当に厄介な野郎だな。今戦で100%仕留めるぞ」
「思念体は"核"のような形状をしているはずです。[異形]から離れた瞬間を見逃さないように注意して下さい」
「了解!」
オニキスの毒攻撃により全身に腐食が回った[木蔦]は、やがて表面からその外見を消していく。
そして、どす黒く変色してぼろぼろと崩れていく[異形]の体躯の頭頂部から、白く光る球体が姿を現す。
「! 出た!!」
ふわりと空中に浮いた球体――[木蔦]の思念体は、[異形]の背面へスライドしたかと思うと、高速でその場から遠のいていく。
「サルファー、追え!!」
「合点!!」
セイバーズ随一の高機動力を誇る陽が飛び出し、光る球体を追いかける。
[木蔦]の思念体とサルファーが『転異空間』を飛び回る中、烈が火球を次々にスローイングし、思念体の進む先を妨害する。
「くっそ…速ぇ…!!」
しかし[木蔦]の速度は衰えず、サルファーはなんとか喰らいついていくものの、ロードナイトの援護を得てしても、じりじりと距離を離されていく。
「まずい、『空間』から逃げられる…!!」
最早打つ手が無いセイバーたちは、最後の一太刀を託したサルファーを固唾を飲んで見守った。
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