第21話_器に巣食う悪意

5/5
前へ
/101ページ
次へ
地上から引き続き『索敵』を試みていた蒼矢(アズライト)は、限りなく確信に近い推論を持って、脳内からセイバーたちへ呼び掛けた。 「おそらくですが、[異形]は[侵略者]の手足になるためだけのもので独立性が無く、思考部位が無いため急所もありません。操る[木蔦(ヘデラ)]は[異形]に寄生する形で使役していて、『転異空間』内に気配が感じられないことから、実体が無いものと思われます」 「…!? 実体が無い…"思念体"だけの[侵略者]だと…!?」 「! 成程。前戦で姿を見ない内に逃げられてしまったのは、それが理由か…」 アズライトの考察に、影斗(オニキス)葉月(エピドート)は各々別の反応を見せつつも得心する。 彼らの呼応に頷くと、アズライトは続けた。 「体躯が無いので、[木蔦(ヘデラ)]にも急所の概念はありません。代わりに、[異形]と分離した[侵略者]の思念体全てが急所です。寄生形態を解かない限り、急所は隠されたままで狙えない」 「…恐らく歴代最弱だろうが、逃がしたら相当に厄介な野郎だな。今戦で100%仕留めるぞ」 「思念体は"核"のような形状をしているはずです。[異形]から離れた瞬間を見逃さないように注意して下さい」 「了解!」 オニキスの毒攻撃により全身に腐食が回った[木蔦(ヘデラ)]は、やがて表面からその外見を消していく。 そして、どす黒く変色してぼろぼろと崩れていく[異形]の体躯の頭頂部から、白く光る球体が姿を現す。 「! 出た!!」 ふわりと空中に浮いた球体――[木蔦(ヘデラ)]の思念体は、[異形]の背面へスライドしたかと思うと、高速でその場から遠のいていく。 「サルファー、追え!!」 「合点!!」 セイバーズ随一の高機動力を誇る(サルファー)が飛び出し、光る球体を追いかける。 [木蔦(ヘデラ)]の思念体とサルファーが『転異空間』を飛び回る中、(ロードナイト)が火球を次々にスローイングし、思念体の進む先を妨害する。 「くっそ…速ぇ…!!」 しかし[木蔦(ヘデラ)]の速度は衰えず、サルファーはなんとか喰らいついていくものの、ロードナイトの援護を得てしても、じりじりと距離を離されていく。 「まずい、『空間』から逃げられる…!!」 最早打つ手が無いセイバーたちは、最後の一太刀を託したサルファーを固唾を飲んで見守った。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加