第1話_閉ざされた地で

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第1話_閉ざされた地で

『転異空間』。 人間が生を育む地球――『現実世界』とは次元を別にするそれは、本来見えるだろう日常の景観を奪われ、また逆にその存在を視界から隔絶された世界に生成される、いわば狭間の空間である。 その本来何も無いはずのフィールドは今、おびただしい数の"羽毛"に埋め尽くされ、意思を持つように舞うその中心には、枯葉色の巨大な鳥が一羽飛び回り、そしてその周りには小さないくつかの人影が、距離を保ちながら囲うように陣取っていた。 「だーっ!! うぜー!!」 そのひとりが響き渡るような癇癪声をあげ、手に持つ二振りの細長い剣を振り回した。 空間を漂う"羽毛"は、でたらめに空間を斬るその獲物の間を器用にすり抜けたかと思うと、その毛先を鋭く尖らせ、声の主めがけて弧を描き速度を増す。 「っ! ってぇ…!!」 無数の"羽毛"の一閃を全身に受け、細剣の使い手――『セイバーサルファー』は面を歪め、身体を縮み込ませた。 彼の身体は既に擦り傷で塗れ、痛みと怒りと苛立ちで、いよいよ顔を真っ赤に染める。 「…んの野郎!!!」 「落ち着けよ、サルファー。冷静さを欠くと傷が増えるだけだぞ、お前の悪い癖だ」 「そうだぞ少年。どうせ振り回すなら狙って動かせよ。的一杯でいいトレーニングになるじゃん」 そんな彼の脳内へ、別々の二方向から声が飛んでくる。 言葉を投げた主――『セイバーロードナイト』は呆れたような表情を露出させ、もうひとりの主『セイバーオニキス』は、隠しきれない愉快さを目元と口端に浮かべていた。 「~、うるせー!! 精一杯やってんだろぉ!?」 叱咤激励とも単なる煽りとも判別できない言葉を浴び、サルファーは頬を膨らませた。 遠く離れていながら脳内で絡む3人の中央で、不意に巨鳥が嘴を大きく開け、けたたましく鳴き叫ぶ。 「~~っ!!」 超音波のような怪鳴に、3人は思わず耳を塞ぐ。 彼らがひるんでいる隙を狙い、巨鳥がロードナイト目がけて豪速で接近する。 寸でのところで回避し、カウンターで得物の赤く燃える太刀をブーメランのように放つが、それもまた紙一重で回避され、ロードナイトは小さく舌打ちした。
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