裏と表

2.豪邸にて

訪問者である俺たちを引き攣った笑顔で迎える吉川。これから自分がどの様な目に合うのか悟りながらも、なんとかこの状況を切り抜けたいという自己防衛の表れなのだろう。それが理解出来ても、この男に何の感情も湧いて来ないのは、俺の感情が壊れてしまっているからなのかもしれない。

若頭の男が吉川の妻が出したお茶を下品に啜ると、単刀直入に質問した。
「お前の後ろにいるのは誰だ？」
それを聞いて答えなかったら、俺が力で聞く。今回はそんな流れなんだろう。
しかし、予想外にも吉川は素直に話し出した。