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孤独
「おはようございます。××市立××中学校の××です。」
「おはようございます。急な申し出で申し訳ないのですが、午前中、時間の空いている先生に代わっていただけますか?」
「えっと……?すみませんが、お名前は?」
「代わっていただければ、じきにわかりますので。」
「は、はあ……?わかりました、少々お待ちください。」
軽快な保留音の後、若い男性の声に代わった。
「もしもし、教員の××です。どちら様でしょうか?」
「今すぐに、××川の河川敷に来てください。場所は××橋の近くです。お願いします。人数は……多い方がいいのかな……?」
「どういうことですか?イタズラではありませんよね?」
「イタズラではありません。そちらの生徒さんが、そこで亡くなっているんです。」
「はい!?うちの生徒が!?どうして──あ、切れちゃった……。うーん、イタズラかなぁ……。」
教師は首を傾げた。
「……あー!!緊張した!!イタ電として片付けられてなきゃいいんだけど……。」
公衆電話から出た俺は、なんとか伝えられたことに胸を撫で下ろした。ミカヅキの話をしても、きっと誰も信じないはずだ。それに、俺が殺したと思われかねない……。
「ごめんな、ミカヅキ。お葬式、出てやりたかったけど……難しそうだ。」
俺は立ち止まって、そう呟いた。きっと、もう聞こえていない。遺体は既に、俺が発見した。隠したつもりだったのだろうか、長い草が生えた所に放られて、既に骨になっていた。服は見当たらなかったが、それはそうだろうなとも思った。ミカヅキは、きっと制服を着ていたのだろう。制服がわかれば、学校も特定出来る。学校が特定されてしまえば、いじめっ子達のしたこともバレてしまうからだろう。全く、小賢しいものだ。
『【速報】××区河川敷にて、身元不明の遺体発見 行方不明となっていた中学生か』
仕事中の俺のスマホに飛び込んできたのは、そんなニュースだった。良かった、見つけてもらえたのか。それに、ミカヅキのことと関連付けられている。ニュース記事を見続けるものの、中々それ以上の情報は出てこない。速報だから仕方ないか、とは思いながらも、やはり気になった。
休憩時間。ニュースを確認すると、教師の証言が公開されたようだった。内容は、俺の電話のことに始まり、ミカヅキの学校での様子など。声は、今朝聞いた若い男性の声かはわからなかった。音声を変えられている。そして、あの電話について調べが進んでいるようだが……変に疑われるのも怖いから、そこは進めなくていいな……と少し思った。
その夜、次の日、その次の日……と続報は続く。そして……
数日後。結局、身元は判明したようだ。テレビに映った生前のミカヅキを見て、心からほっとする。どうやら、部屋から見つかったミカヅキの日記や、いじめっ子の一人の告白によって、犯人までもがわかったらしい。本当に、本当に、安心した。
「──ミカヅキ。後は俺を待つだけだよ。」
次は一緒に生きて、俺がミカヅキを守る。
隣が寂しいベンチで一人、俺は決意した。
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