騙されたと思って

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「この前さ、バイト先のツレに『騙されたと思って食べてみて』って言われたんよ」 ギャルに憧れている若菜(わかな)が、肩までかかる金髪の毛先をクルクル弄りながら話しかける。 「うん、よく聞くフレーズだよね。自分のお気に入りをお薦めしたいけど、相手が乗り気じゃない時に使うんだよね」 若菜のルームメイトの佑香(ゆか)はリビングの炬燵(こたつ)に入り、ミルクティの入ったマグカップを両手で包んでいる。 「ウチもそう思った」 「で、何を食べたの?」 「蕎麦にマヨネーズ」 「蕎麦にマヨネーズ?」 「そう。ツレってマヨラーなんよ」 「マヨネーズを好きな人って色んな食べ物にマヨネーズをかけるよね」 「ウチ、蕎麦もマヨネーズも好きなんよ」 「私も蕎麦、よく食べてるよ。私、冷え性でさ。蕎麦って身体を温めてくれる効果があるんだって」 うんうんと頷き、若菜は話を続ける。 「そんで、『騙されたと思って』なんて言ってるけど、実は美味しいんじゃないかって期待して食べたんよ」 「うん。で、結果は?」 「騙された」
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