最後の私

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 けれど。  「母」だから「妻」だからと言って、全てを引き受けることはなかったのだ。 『何で何も言わないの⁉ 娘が困っているのに! あなた、母親でしょう!』  何も言わない私に苛立ったように、スマホからはそんな娘の怒鳴り声が聞こえた。  やることが、夫と同じだ。  そこはさすが親子だなと、私はそんなことを冷静に思いながら、通話を切った。  その次に、着信拒否の設定をする。  今の私は、娘の「母」でもなければ、夫の「妻」でもない。  それは、「私」だった。  私は「私」のために、残された時間を使う。  母も妻でもない「私」は、「母親でしょ」「妻だろう」という言葉に、殺され続けていた。  何度も、何度も。  夫から。  実の両親や義理の両親から。  実の子どもである、娘から。  そして、世間から。
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